子育てって、子どもが大きくなるにつれてやることって少なくなっていく。実はそれがいい。
あれもこれもと、口を出して育てるよりも、親は子どもを見守り、子ども自身の意志で学び育ってくれることが理想です。
とはいえ、それはあくまでも理想。子どもが思うようには育ってくれないのもまた事実。だからイライラしてつい子どもの言動に口を出してしまう。見守るのが理想だとわかっていても、結構難しい事だと思いませんか?
実は「見守る」にもコツがあった事をご存じでしょうか?
どうやって子どもを見守ればいいのか?そのバイブルがあります。「見守る」子育てという本です。
今回の教材と著者のプロフィール
小川大介氏
教育家。見守る子育て研究所 所長。1973年生まれ。京都大学法学部卒業。学生時代から大手受験予備校、大手進学塾で看板講師として活躍後、社会人プロ講師によるコーチング主体の中学受験専門個別指導塾を創設。塾運営を後進に譲った後は、教育家として講演、人材育成、文筆業と多方面で活動している。(著書発行時)
学びポイント(書評)
見守る子育てで、養いたい3つの自分軸
本書を読む前に、子どもをどのように育てたいのか、その価値観については確認しておくといいと思います。
当ブログで何度も書いていますが、僕の子ども時代は、いい大学へ入り、いい会社に入ることが成功だった時代。子育ての価値観はここにありました。
ですが、これからを生きる子ども達はこの生き方モデルでは通用しないと言われています。
著者は、先が見えない時代、親が子どもに持たせてやりたいのは、「自分軸」だといいます。
自分軸とは、自分はどういう人で、何が好きで、何が得意なのかという自分に対する理解であり、それに基づいた判断基準。自分軸こそがこれからの生きる力になるという事をおっしゃっている。
この自分軸を伸ばす子育てが、見守る子育て。
見守るといっても、子どもに全く口を出さず、手を出さずではやはり育ってくれません。
口や手を出さなくても、自ら学んでくれるように種をまいていくのが親の仕事だと言ったらわかりやすいでしょうか?
子どもが自分軸を得る為には
- 自信を持つ
- 学びの技術を得る
- 習慣を身につける
の3つが必要。本書では、この3つを育むためのコツが詳しく書かれています。
一般的な書評は他の方に譲るとして、ここでは僕が本書を読んで心に響いた点に絞って感想を書いてみたいと思います。
勉強よりも遊びが優先
子どもの強みを伸ばすのは遊びだという著者。遊びと勉強のどちらが優先かと言えば、それは圧倒的に「遊び」だといいます。
東大に入るような子は勉強を遊びのように思っている人も多いはず。けれども勉強を遊びと考えられる学生は少ないように思います。だからこそ、勉強と遊びのバランス。これについては僕はずっと思い葛藤してきました。
今の子どもは圧倒的に遊びが少ない。
「やりすぎ教育 商品化する子どもたち」*1の著者である、武田信子氏は、今の子は成功することを求められすぎているといいます。自分が好きで勉強していればいいのですが、ほとんどの子が良い大学へ行くために好きな時間を削って勉強しているのが日本だといってもいいでしょう。
先般、丸山島根県知事が苦言を呈したとおり、文科省は教育指導要領を詰め込み過ぎだと僕も思っています。
暗記中心の勉強では社会に通用する人材が育たないといい、大学入試は今後、思考力が必要な問題に変更されていく。ですが結局、暗記もしなくちゃいけないし、思考力も養わないといけない。大学へ行くためだけの勉強量がただ増えているだけとしか思えない。
もしそれが好きでもない勉強なのであれば、いずれ学んだ事の大半は記憶から消えていくのがほとんどかと思います。そういった中途半端な知識だけを備えた大卒が世の中に溢れてかえる事になる。実際、大学教授がほとんどの学生が大学で学んでいない事を嘆いていらっしゃる。
もういい加減、同じ過ちを繰り返しをしてはいけいないと思う。
何となく大学へ行かないといけない。と親の見栄で縛るのではなくて、むしろ本当に得意な事が見つかったのならば、勉強はそこそこにして遊びを優先してやるべきではないかと今は思っています。
堀江貴文氏は、徹底的に遊べばそれが自然と職業になる、
【書評】「10年後の仕事図鑑」を読んで見えてきた。これからの時代に伸びる子とは? – 未来の教育、未来の子育て
そういう時代がくると断言されていますが、決して大袈裟ではなくて、本当にこれからの時代は、自分軸、得意を見つけられた子の時代になると思う。
例えばゲームです。今色々な新しい技術でゲームは作られています。こういった技術を身につけたエンジニアは高給をもらえます。元日本マイクロソフト代表取締役の成毛氏は、著書の中で*2新しい技術にどんどん触れる子、変化が好きな子が、これからは生き残るとおっしゃっているのですが、まさに遊びが仕事に繋がっていくんだなと連想できますよね。
読書は何のためにするものか?
著者の読書についての考え方も非常に共感しました。
著者は、読書神話といったら大げさかもしれないが、大人の側が読書に期待しすぎているのではないかとおっしゃっていますが、まさに同感です。
僕も子どもが小さい時には頑張って読み聞かせをしたものです。それ自体は良かったと思っています。ですが子どもが大きくなって二人共読書好きになったかと言われると、実はそうでもない。
なぜ僕は子どもに読書をしてほしかったのか?を改めて考えた時に、興味関心があることを是非、本で調べて欲しいなと思ったからでした。
今はわからない事はネットでも調べる事はできますが、無料の情報とお金を払った情報ではやっぱり価値が違う。
お金を払って、生きた情報を手にして欲しい。そう思った時に本だったんですね。どんなジャンルの本でもよいので、自分の関心事を本で調べるくせをつけてほしい。
下の子はゲームが好きなので、ゲームの攻略本を買ってやり、とことん調べるように言いました。ゲームの攻略本だってわからない事を調べられる立派な本です。夢中になって毎日調べてはアウトプットしている。
またゲームだけではありません。最近魚やカブトムシを飼うことにしたのですが、その育て方の本は、図書館で3冊くらい借りて調べるようにしました。
読みたくもない名作本を何冊も無理やり読ませることよりも、関心のある本を読んで調べてアウトプットする。
本は読むだけ(インプット)では実はあまり意味がない。読んだ知識を試すこと(アウトプット)が大事。それができれば本のジャンルは何だっていいんです。
本書を読んで何のための読書なのか?という原点に戻れた気がします。
学びは技術である
これもとても心に響きました。むしろ本書の言いたい事はここにあるのではないかと思うほど重要な章だと僕は思いました。
学びとは、関心を寄せたものを調べ、理解し、記憶に残すまでの一連の流れをいうだと著者はいいます。いかに調べることが大事か?は著者の真骨頂でもあります。「頭のいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある」も小川氏の著書です。
今の子は、あれをやりましょう。これをやりましょう。とメニューは多く与えられるものの、どうやって学んだらいいかについては誰も教えてもらっていないともいいます。
これは灯台下暗しで、実は自分で学べる子は、関心があることを調べる方法を知っているというわけです。
僕が学生の時代は、インターネット等何もない時代でした。また田舎に住んでましたので、例えばですが、作曲したいと思っても、作曲の仕方を教えてくれる人もいなかった。関心は示したけど、すぐに諦めていた。そういう時代でした。
ですが今はインターネットも普及し、また図鑑も多様化して豊富に揃っています。色々な手段で、調べることができる。であれば、親は与えるばかりでなく、子どもに調べ方を教えるべきなんですよね。
そのコツが本書にはたくさん書いてあるのも良かったです。
同調圧力に屈しない
以前、友だち幻想という本の書評を書きました。*3
皆と同じ事ができないと仲間外れにされる同調圧力が強いのが日本。出る杭は打たれるのです。
ですが、これからはダイバーシティが進む社会。日本という小さな島国の価値観で凝り固まってしまうことはもはやデメリットしかありません。
著者は親が同調圧力から子どもを守ってやる事も親の責務である事を説かれていますがまさにそのとおりだと思いました。
- 学校は必ず行かなければいけない
- みんなと同じように勉強して大学へ行かなければいけない
- 友達が少ないと社会でやっていけない
こういった型に、親が子どもをはめない。ありのままの子どもでいい。そう信じて子どもを認めてやることが個性を育むのだと学ぶことができました。
なぜの正しい使い方
- なぜ、忘れたの?
- なんで間違っちゃうわけ?
- なんで言われてすぐにやらないの!
僕たちは、子どもを叱るときに「なぜ」を使いがちですが、筆者の考え方は違います。
なぜ?は上手くいった時に使うのだそうです。
- なんで今回はハードルをうまく跳べたの?
- なんでうまくいったの?
うまくいった理由がいえるなら、それを次も同じようにすればうまくいく、再現性が高くなるということですね。
再現ができるとまたやりたくなるし、自信につながる。ちょっとした言葉がけの違いであるんですけど、効果は大きく変わるんだな~とこれも本書を読んで目から鱗のコツでした。
できるだけ早く自分軸を作れるように
著者は、見守る子育て研究所*4を立ち上げられているくらい、子を見守ることの大切さを説かれています。
ただし、見守るというのは何もしないという意味ではない。自ら学ぶ子になるためには、親が声掛けをしていかなければならないという事でした。子どもとどう関わるべきか、そのノウハウ、コツが本書にはびっしり書かれています。
著者が本書の中で「子育ては2勝8敗」だとおっしゃっているのがとても印象的でした。いつも子どもに余計な一言をいっては、反省している僕でも、10回のうち2回でも、よい声掛けができればそれでいいんだと気が楽になりました。
僕も今のところ、見守る子育てを我慢強く実践しているところです。嫌いな事を押し付ける事はせずに、子どもの得意を広げるためにはどうしたらいいかを常に考えて声掛けしています。
大学へは行くかもしれないし、行かないかもしれない。それは子どもの人生。後悔のない人生を自分で選ばせてやりたい。これだけが唯一僕が子どもにしてやれることだと思っています。
僕は子どもより長く生きている分、社会の酸いも甘いも知っていますが、最近思う事はやっぱり自分軸がないと社会では苦労するなという事。
できるだけ早く自分軸を持てる方かいいのは間違いない。
難関大学に受かった等、目に見える成果がない分、自分軸作りは遠回りに感じてしまいがちだと思います。けれど、子どもの長い人生を考えた時とても大切なことなんだと思うんです。
もっと長いスパンで子どもを見守るべきではないか?本書を読むと僕の教育は決して間違っていないと、とても勇気が湧いてくるのです。