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東大には親の年収が1,000万円なくても入れるか?【書評】学力の経済学

多くの教育本や子育て本の書評を書いている僕ですが、「子どもを〇〇大に入れたママ」うんぬんの本は、あまり好んで読みません。

「どうせ、うちの子に〇〇大なんて無理」と思っているところも正直あるのですが、いやいや、経済力があるからそこまでの子に育てられるんでしょ?という嫉妬心もどこかにあることは否定できません。

ですが、これって完全に僕の主観であり、客観的に物事が見られていない証拠でもあります。で今回「子どもを〇〇大に入れたママ」本を読む前に、客観的に学力と経済力は比例するといえるのか、知りたいなと思いました。

実はそんな本がありました。教育経済学を専門とされる中室牧子氏の「学力」の経済学という本です。

目次

本書と著者のプロフィール

著:中室牧子
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中室牧子氏

1998年慶応義塾大学卒。米ニューヨーク市のコロンビア大学で博士号を取得。日本銀行や世界銀行での実務経験を経て2013年から慶応義塾大学総合政策部准教授に就任。専門は、教育を経済学的な手法で分析する「教育経済学」

本書の要点ポイント(書評)

  • 「子どもを勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないの?」
  • 「子どもはほめて育てるべきなの?」
  • 「ゲームは子どもに悪い影響があるの?」

こういった議論を、子育て番組などを見て参考にされた経験はないでしょうか?

ですが、教育評論家や子育ての専門家と呼ばれる人達の主張は、なぜか個人的な経験に基づいていることが多い。そこに科学的根拠はなく、「なぜその主張が正しいのか」という説明が十分になされてないと著者はいいます。(なるほど、その通り)

教育経済学とは、教育を経済学の理論や手法を用いて大規模なデータを用いて分析する学問です。

教育経済学がデータを用いて明らかにする発見は、教育評論家や子育て専門家のノウハウよりも、よほど価値があるものだという著者が、数々の子育てに関する疑問を教育経済学の観点から明らかにしていきます。

個人の成功体験は我が子にも通用するのか?

子育ての成功体験(特に難関大学へ子供を合格させた)は、果たして我が子にも通用するのか?子育てをしている親御さんなら一度は疑問に思った事はありませんか?著者は

どこかの誰かが子育てに成功したからといって、同じことをしたら自分の子どもも同じように成功するという保証は、どこにもありません。

といいます。例えば、難関大学へ子供全員を合格させた成功事例については

東大生の親の平均年収は1,000万円という有名なデータをもちいて(2012年学生生活実態調査)子供を全員東大に入れたといった事例は、「例外中の例外」だと言い切っているところはものすごく納得します。

つまり難関大学へ子供を全員合格させたという教育ママの事例にはこうした背景が抜けており、データを分析してみれば、民間所得の平均年収が400万円代であるいわゆる一般市民には例外だということが分かるというわけです。

このようにいち個人の成功体験や逸話の話だけで教育を語らないのが、教育経済学がとても新鮮なところです。

読書をすれば、学力はあがるのか?

文部科学省は、全国学力・学習状況調査の結果を用いて、子どもの学力と家庭環境にどのような関係がみられるのか分析しています。

その結果から調査は、親の年収や学歴が低くても、学力が高い子の特徴は、家庭で読書していると結論付けています。

この調査結果を受けてメディアは「子どもに読書をさせることが重要だ」と報道しました。しかし、残念ながらこの報道は正しくない。ただ、学力が高い子が読書をしているに過ぎないとと著者はいいます。

僕個人も正直、本を読めば学力はあがると今だに信じているところがありますし、多くの著名人が読書好きであることもまた明らかです。何が間違っているの?と思いました。

しかし、この調査には、「子どもに対する親の関心の高さ」などの、第三の要因が抜けていると著者は指摘します。なるほど、確かに親が本を買い与えたり、本を読み聞かせしてあげたり、そういった背景はこの調査では見えてこない。

これは見せかけの相関であり、読書をすれば(原因)、学力が上がる(結果)という因果関係にはならないというわけです。

(ただし、僕は本が好きなので、エビデンスとはまた別で、子どもには本を読めば人生が豊かになるよと勧めています。)

テレビゲームは子どもに悪影響を与えるか?

子どものスマホ問題、ゲーム問題は多くの親が悩んでいる事だと思います。我が子も決して例外ではなく、スマホでゲームをしています。今は制限内でスマホ利用をしてはくれているものの、いつかスマホ依存になってしまわないかと心配で仕方ありません。

しかし、ゲームは本当に子どもにそこまで悪影響を与えるのでしょうか?

それにも実はエビデンスがあり、ゲームそのものが子ども達に負の影響をもたらすのは私たちが考えているほど大きくないという研究結果が出ているそうです。

もちろんやりすぎについては悪影響がありますが、1時間程度テレビやゲームを見るくらいなら問題なし。エビデンスを基にそういってもらえると少しは安心します。

気になった友達が与える影響についての研究

著書の中で僕が注目したのが、「友達が与える」影響についての研究です。

僕個人の話でいえば、「よき指導者」や「よき友人」に恵まれると、子どもによい影響があると思って、中学受験を経て、長女を私学へ行かせた経緯があります。ただし期待はあったものの根拠があったわけではありません。

ではデータからみると果たしてどうなのか?著書にそのひとつの答えが書かれていました。

この分野の研究の代表的なものに、スタンフォード大学のホックスビィ教授の研究があげられています。また、同様の研究が中国や欧州でも研究されているとして

学力の高い友達の中にいると、自分の学力にもプラスの影響があることがデータとして証明されているとしています。(ただし影響をうけるのは、もともと学力が高かった子どものみ)

一方で、問題児から受ける影響についても研究があり、問題児の存在が、学級全体の学力に負の因果関係を与えることも分かっていると。

僕は教育の専門家ではありませんので、ただの一般人が感想を述べているだけにはなりますが、中学受験を経て、娘が学力が高いクラスで切磋琢磨できることは、娘にとって少なからずプラスになっていると、この著書を読んで納得ができました。

人生の成功に重要な非認知能力

現在は、学力よりも大事な能力として非認知能力があげられることが多い。本書でも、非認知能力に触れている章があり実に興味深い。

IQや学力テストで計測される能力を認知能力というのに対して、「忍耐力」や「コミュニケーション能力」などを非認知能力といい、生きる力ともいわれます。

この非認知能力が、将来の年収などにも大きな影響を与えることがデータでわかってきているというのです。

非認知能力のひとつであるやり抜く力「グリット」を伸ばすためには、自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって伸ばすことができると信じる「しなやかな心」が必要だというのは、卓球のオリンピック代表までになったマシュー・サイド氏の著書「きみはスゴイぜ!」でも書かれているとおりです。

学力も大事ですが、こうした非認知能力に目を配ることがこれからは大事なんだと本書を読んで改めて思いました。

エビデンスベーストとは何か?

さて、著書にはその他にも、

  • 教育にはいつ投資するのが一番効果があるのか?
  • 少人数学級には効果があるのか?

などエビデンスに基づいて、因果関係を明らかにしています。

エビデンスは根拠の事です。このエビデンスを基にすれば、〇〇の原因から〇〇という結果だと結論づけることができる。エビデンスはランダム化比較実験などを行って初めて根拠と言えるので、信頼性が高い。こうしたエビデンスに基づいて政策判断をすることを、エビデンスベーストといいます。

↓著者の中室牧子氏のインタビューは参考になります。

米国では、2001年ブッシュ政権下で成立した「落ちこぼれ防止法」に、科学的根拠に基づくというフレーズが実に111回も使われるなど、既に教育にもエビデンスベースト(科学的根拠)を求めるようになってきているといいます。

つまり科学的根拠がないと、教育予算がつかないという事です。しかし日本はまだまだ

エビデンスベーストが行われているとはいいがたいですね。

まとめ。いち個人の成功談に踊らされず、自分が信じる子育てを。

冒頭に書いたとおり私たちは

  • ○○大学に子どもを入学させた成功談
  • 〇〇君をどのように育てたか

といった、いち個人の成功談に踊らされる傾向が強い。そう、私たちは成功談にとても弱いのです。

それは子育てに正解がないからだとも言えるのではないか?そう考えればもし、エビデンスベーストを基に教育政策がされるようになれば、そうした情報に踊らされることも少なくなるかもしれないなと思いました。

いくらエビデンスベーストだとはいっても、子育てってそんなに簡単にいくものではない事もわかっています。

ですが本書を読めば、少なくともいち個人の成功談に踊らされることなく、自分の子にあった子育てをやっていこうとは思えるのではないかと思います。

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