皆さんはピーター・F・ドラッカーをご存じでしょうか?
ドラッカーは、20世紀を代表する経済思想家であり、「マネジメント」「経営者の条件」「現在の経営」等、ビジネスマンのバイブルともいえる名著を数多く残し、マネジメントの父とも呼ばれる偉人として知られています。
ドラッカーが残した名著の中で、今回紹介するのが、「プロフェッショナルの条件」という本です。本書はビジネス書でありますが、
- どんな分野であっても子どもをプロとして育てたい
- 子どもに人生豊かに生きてほしい
- 子どもに人生哲学みたいなことをわかりやすく教えたい
このように子どもの人生を豊かにしたいと考えている親御さんにもお勧めです。
プロとは成果が出せる人のことです。成果というと仕事の成果と考えてしまいがちですが、ドラッカーは、成果とは、人が人生を豊かにするために必要なものだという考えです。そういう視点で本書を読めば、子育てにも目から鱗のヒントがたくさん書かれています。
今回紹介しているのは、正しくは、ドラッカーの原書ではなくて「13歳から分かる!プロフェッショナルの条件」。ドラッカーの原書をコンサルタントの藤屋氏が監修したもので、13歳が読んでもわかりやすく整理まとめてくれているので、1日で一気に読めます。
本書と著者のプロフィール
監修:藤屋 伸二氏
1956年生まれ。1996年にコンサルタント事務所を設立。1998年、大学院に入りドラッカーの研究を始める。現在は、ドラッカーのマネジメント理論を「ニッチ戦略」「ポジショニング」の視点から再編成した「客離れしない値上げの手順」を考案し、中小企業を対象に業績伸長やV字回復を支援している。(著書発行時)
本書は「13歳から分かる!」というタイトルですが、むしろ大人向け
13歳から分かる!とありますので、中学生にお勧めの本と思いがちですが、中身は割とがっちり経営マネジメントの事が書いてあるので、中学生がピンとくるかどうかはわかりません。
どちらかというと、「専門用語を13歳が読んでもわかるように説明してくれている本」というのが僕の理解です。
我が家は、読売KODOMO新聞 を購読しているのですが、新聞はこの読売KODOMO新聞だけをとっています。僕自身も読んでいるのですが、恥ずかしくて今更聞けないようなことも、子ども新聞なら丁寧に解説してくれている(笑)子どもも大人も読めるので、本当におすすめなんですよね、子ども新聞。
↓アンジャッシュ児島氏も、朝日子供新聞を読んでいらっしゃいます。
本書は、そういう活字が苦手な大人でもスラスラ読める本だという意味で、「13歳でも分かる!」なんだと僕は理解しています。
ではここからは、本書の書評を書いてみたいと思います。
本書の要点ポイント(書評)
親は、今は知識社会になっていることを理解し受け入れよう
昔は「ヒト・モノ・カネ」という資本がないと勝てない時代でした。しかし今はインターネット社会になり、資本がなくても知識さえあれば、誰でもアイデア次第で勝てる。そういう時代になっている。ドラッカーはこれを知識社会と呼んでいます。
事実、世界中のベンチャー企業の多くは資本をもたないネット起業ですし、勿論、ユーチューバーだってそうですね。知識を使って成果をあげている若者がすでにいっぱいいる。
僕らは親は、この事実を受け入れる必要があります。
「資本の大きい安定した大企業に子どもを就職させたい」それもいいけれど、今は新しい時代になっているんだということを理解しなければいけないと、本書を読んで改めて思いました。
プロになるために必要な5つの能力とは?
本書では、全く成果を出すことができずに悩んでいた青年が老紳士と出会い、老紳士のアドバイスをもとにプロとして成長していくというストーリー仕立てで、ドラッカーのプロになるための5つの能力についてわかりやすく解説されています。
ここからはこの5つの能力について、我が子に身につけてほしいという視点で書評してみたいと思います。
貢献を考えられる人になろう
貢献には2種類あり、
- 組織が世の中にどう貢献しているか
- 個人が組織にどう貢献するか
を考えることが大事だといいます。
社会に出て就職すれば組織に属することになります。その時に、「この会社で自分が何の貢献ができるのか」を考えられることは重要です。努力の方向性が間違っているせいで、いくら頑張っても会社に評価されないという例は実は多いです。
貢献ができると、どんどんと会社や人から評価されて信頼(クレジット)が貯まります。クレジットとは、「他人から与えられた信任の総量」のことをいいます。
この考え方は、僕が好きな藤原和博氏の考え方なのですが、これからの時代は、クレジットを貯めた人に人やお金が集まるというのです。
↓藤原先生のクレジットの考え方は下記記事がわかりやすいです。
強みを生かせる人になろう
僕らは弱点があればそれを何とか克服しようとする教育を受けてきています。ですが、弱点を克服してもせいぜいマイナスがゼロになるだけで、強みからしか大きな成果は生まれないといいます。
これからの時代、とても大切な考え方ではないでしょうか?
失敗図鑑によれば、アインシュタインは数学だけがとびぬけて出来て他はからっきしダメだったという話ですし、今日から塾をやめてみたによれば、さかな君は、お母さんが学校の勉強はできなくてもいい。と魚の事を伸ばしてあげた結果、今や大学教授です。いずれも強みから大きな成果を生み出した好例ですよね。
子どもが数学ができない。。。焦りますよね。
「これから大学でも数学は必須化されていくだろうし、数学の塾に行かせようか?」
親としてはマイナスをゼロにはしておきたいです(笑)
ですが、英語が得意で、英語をものすごく頑張っているのなら、急がば回れではないですが、子どもが強みを伸ばしていることは肯定してやりたいですよね。(これっ、我が家の話でした笑)
その強みから大きな成果を得られるかもしれない。
時間をコントロールできるように!
僕が最も子どもに教えたいと思った時間の話。
お金でも決して買うことができない。誰もが平等に1日24時間もっている。それが時間です。
成果を上げる人はこの自分が持っている時間の中で成果を最大化するにはどうしたらよいのかを常に考えているといいます。この時間の考え方は大変僕自身も勉強になりました。
↓ドラッカーは時間からはじめる
時間の使い方を棚卸する上で、自分のタスクの中で人に任せられるものはないか?と考えることはものすごく大事です。
僕が小さい頃、父に教わったことで最も印象に残っているのが「経営者は自分で仕事をしてはいけない」という言葉です。
仕事を部下に任せる事ができれば、経営者は強みである経営に特化して最高のパフォーマンスを出すことができるという意味だと教えてもらいました。
何でもかんでも自分でやりたがる人がいますが、それではとても時間が足りないし、結局自分の強みに時間を費やすことができない。自分が得意でない分野は他人にお金を払ってでも任せて(外注する)、自分は得意分野に特化する。
この考え方はとても重要なので、子どもにも教えておきたい考え方です。
いちばん重要な事を最初に、集中してやる
成果をあげる為に必要な事は集中することです。二兎を追う者は一兎をも得ずということわざがありますが、大事な事を「1つだけ」「一番最初に」集中してやるというドラッカーの考え方はとても重要だなと思いました。
自分に夢があるなら、成果をあげる為に大事だと思う事を最初に集中してやりなさいと。
成果をあげるために大事だと思う事を1つ選ぶのも結構難しい作業ではありますが、考え方のひとつに
みんなと一緒ではなくて、独自性を優先する。というのが本書でも紹介されていました。
皆と同じ事だけをしていては、大きな成果は上げることができないのだな~と共感しました。
この考え方は、レッドオーシャン(たくさんの人が競争している分野)で戦うのではなくて、ブルーオーシャン(まだ誰も競争していないニッチな分野)で戦えという考え方だと思うのですが、子どもには是非、教えておきたいです。
ブルーオーシャンの考え方を詳しく知りたい方は、僕が読んだ本でいえば、ひろゆき氏の「僕が親ならこう育てるね」や堀江貴文氏と落合陽一氏の共著「10年後の仕事図鑑」でも書かれていますので、併せて読んでみてほしいですね。
実行できる人は成果をあげる事ができる
色々考えてもそれを実行に移せないのでは、何も成果を生み出す事ができません。成果を上げている人とそうでない人の決定的な違いは、実行できるか、できないか、この差だと僕は思います。
ですがこの決定も、成果を生み出すものなのかを判断しなければいけないので、大人でも結構難しいのです。本書ではこの意思決定を5つのステップで行うとして紹介されていて大人である僕が参考にしたいと思いました。
一番参考になったのは、自分が新しい問題、課題だと思っている事も、実は一般的な問題ではないかと考えてみるという事。
例えば、会社で与えられた全く新しい課題について、「どうして解決したらよいのか?」分からず途方に暮れることがあります。
しかし、それは自分にとっては全く新しい事であっても、他では既に解決方法が提示されているかもしれない。
以前、失敗図鑑の書評で、「巨人の肩の上」という話を書いたのですが、要は僕らのやっていることは新しいと思っていても、皆、先人の知恵の上で成り立っている。だからその知恵を借りたらいいのですね。
「こんなのわからないよ!」ではなくて、先人の知恵を探してみることは大事だなと思いました。
まとめ 成果をあげて自分自身を成長させる次のステージへ
ドラッカーのプロフェッショナルになる条件を若いうちに身につけておくと、将来きっと役に立つと思います。
今、子どもにこれを話したとしても心に響かないかもしれません。ですが、大人になった時に、
「そういえばパパがこんな事言ってたな。」
と思い出してくれたらいいなと思います。
そして子どもが一定の成果をあげることができたとしたら、次に
- 人に教えること
- 自分が成長できる場所を選ぶ
という本書で紹介されていた自分自身を成長させてくれる次のステージに進んで欲しいと思います。
自分が成功した事を、教え伝える事、そして自分自身も安住することなく、成長ができるステージに挑戦する事。それが本当のプロである。
今は理解されずとも、親としてそこまで話をして、これもまた
「そういえばパパがこんな事言ってたな。」と思い出してくれたらいいなと思います(笑)
プロってすごい!子どもを真のプロに育てたいと夢見る僕のような親御さんにお勧めの一冊でした。