わかっていたことですが、子どもが成長するにつれ、悩み事や心配事が増えてきました。思春期になれば、子どもが親の思うような成長を見せてくれない、それでイライラや不安を募らせることもあります。
小学生高学年にもなれば、よその子と比べて子どもが全然勉強しないとか、よその子は塾に通っているとか聞くと、我が子は大丈夫だろうか?といらぬ雑音で悩んでしまう事だってあります。
覚悟はしていた事ですが、それにしても自分が描いたストーリー通りいかないのが子育てです(笑)
ですが、最近、遺伝に関する本を読み、
- 才能は遺伝で決まっているんだよ
- 才能は誰にでも眠っているんだよ
ということを知り、少し子育てが楽になりました。
以前僕は「トンビは鷹を生まない」とも書きました。*1
トンビは鷹を生まないとは言ったものの、その根拠はないまま、ただ自分に言い聞かせるがために書いたのですが、それが遺伝の本を読んで、頭の中で繋がったというか、本当に子育ての悩みが和らいだと思います。
思えば僕は子育てに一生懸命になりすぎていた。結果、子どもを無理を強い、ストレスを与えていたこともたくさんあっただろうと思います。
本書と著者のプロフィール
高橋 孝雄氏
慶応義塾大学医学部小児科教授。医学博士。専門は小児科一般と小児科神経。日本小児科学会会長。1957年生まれ。1982年慶応義塾大学医学部卒業。1988年から米国マサチューセッツ総合病院小児神経科に勤務、ハーバード大学医学部の神経学講師も勤める。1994年に帰国し、慶応義塾大学小児科で、医師、教授として活躍している。(著書発行時)
本書の学びポイント(書評)
著者は、1982年小児科の先生になってから、本書が発売されるまでの36年間ずっと子どもと向き合ってこられました。
多くの子ども達との出会いの中には、早産で生まれたごく小さな赤ちゃん、もうだめかもと思うような赤ちゃんとの出会いもあったそうですが、まるで奇跡のように息を吹き返す。そんな瞬間に立ち会って、「遺伝子が書いたシナリオ」の凄さを実感してきたのだそうです。
子どもの持って生まれた力を信じることができれば、子育てはもっとゆったりとおおらかな気持ちでできる。
本書は、子どもの才能や能力に悩み焦る、また、完璧な親を演じることの窮屈さを感じしている親御さんであれば必読の本だと思います。
子どもの才能は、遺伝子によって受け継がれている。決して焦らない事
子どもの幸せを願わない親はいません。けれどそれゆえに、過剰に子どもの進路を無理に親が考えたり、過度に期待をかけたりしてしまうことがあるものです。
教育熱心であればあるほど、早期教育で英語を習わせてみたり、子どもがスポーツが苦手だと思えば、スポーツの家庭教師をつけてみたり。とにかく子育てに一生懸命になる。
しかし、それらを、無理に子どもに強いても、才能は遺伝によって決まっているとしたらどうでしょうか?
著者は、早期教育に意味はないし、親がスポーツ苦手なら子どもも苦手。子どもに無理強いしても決してスポーツが得意になることはない。といいます。
親が全然勉強ができなかったのに、子どもが難関大学へ入学したというような例もあるけれど、それも、たまたま親が勉強できる環境でなかっただけで本当は親に才能があった可能性があるのだと。
行動遺伝学の先生といい、小児精神科の先生であり、教授である著者にそういわれると、子育てに頑張りすぎていた自分が我に返った気持ちになります。
けれども、子どもは誰もが才能をもっており、しかし、それはいつ発現するかわからない。親は決して焦らず、子どもを信じて、遺伝子が用意したシナリオを信じて待つことが大事なんですね。
例えば、僕の場合、子どもの身長を気にした時期があり本も読みました。*2僕は比較的背が高いのですが、ママは低い。僕が背が高いから全く気にしていなかったのですが、ある時子どもの身長が思うほど伸びないことに気が付き焦ったのです。
- 「牛乳を飲んだから背が伸びるわけではない」
- 「たんぱく質を摂取したほうがいい」
- 「運動はやっぱりしたほうがいい」
本を読んで、色々参考になりましたが、これも身長は遺伝によって決まっているんだと受け止めることができていたのなら、一生懸命になりすぎて娘にいらぬプレッシャーをかけずに済んだと猛省しました。
外に任せてもいい。完璧な子育てを求めず、親が心に余裕も持つことが結果、最高の子育てに繋がる
子育ての本は本当にたくさん出ています。子育て本は、諸刃の剣といってもいいでしょうか?子育てを時に偏ったものにしてしまいます。
インターネットには情報が溢れていて、嘘の情報も多い事も知っていますけど、良かれと思ってあれもこれもとお金もかけて、子どもの将来を作り上げようとしがちです。
でも、親は子どもの将来を決して設計することはできないし、一生懸命になる過ぎることで、逆に子育てを窮屈なものにしてしまうことを本書で学ぶことができました。
例えば、母乳で育てた方がよいであるとか、離乳食は自然食にこだわって食育をしたりだとか、素晴らしい事ですけど、それで聡明な子どもが育つ根拠はなにもない。子どもの料理だって、冷凍食品でもデパ地下の総菜でもいいじゃないですか?と著者はいいます。
逆に完璧に子育てをしようとすれば、子育てを窮屈なものにしてしまう。
元なでしこジャパンの丸山桂里奈さんがご両親やご主人に頼りながら育児をしていると発言されたのに対して、「育児は人に頼るなとか、赤ちゃんがいるのに外出するな」というコメントがあった*3そうですが、
ちょうど本書で、ヒラリー・クリントン氏がお孫さんのお世話をされている話が紹介されていたので紹介したい。
「育児はルーティーンとノンルーティーンに分けられる」。ルーティーン、つまり毎日行われる定型的な作業、オムツ替えや食事、昼寝の見守りなどは外注してもいいし多少手を抜いてもいい。しかしノンルーティンな時間は人任せにしない。
ヒラリーさんにとってのノンルーティーンは、お孫さんに毎晩お気に入りの絵本「グッドナイトムーン」を読み聞かせる事。これは絶対に人任せにしない。
まさに丸山桂里奈さんがおっしゃりたいのはこういう事だと思います。
子どもとのノンルーティーンの時間を濃く大事にするために、ルーティーンは多少手を抜いてもいい。余裕や笑顔が出来て、子どもに愛情をたっぷりと注げるのならそれこそが最高の子育てではないかと。
そういったことを著者も本書で言いたかったのだと思います。
まとめ。早期教育よりも自己肯定感を育むこと
まとめになりますが、著者がいう最高の子育てとは、焦らず、子どもの力を信じて待つ事。それだけでした。
焦って親があれこれ教育しても、それで良い結果が出るわけでもない。子どもには誰にでも才能があり、けれど、それはいつ発現するのかはわからない。まるで釣りのように気長に待つ事なんですね。
僕がそうでしたけど、特に最初の子は、愛情をいっぱいかけると同時に、勉強もスポーツも出来る子に育ててやりたいって、目に見える成果を求めがちです。
ですが、そういった目に見える成果ではなくて、「共感力」「意思決定力」「自己肯定感」を育むことが大事なんだという著者の意見にはハッとさせられました。この3つは生きていく上での土台みたいなものですから、しっかり土台固めからするということですね。
もう少し早く、本書に出会っていればよかったなと思うこともあるけれど、まだまだ僕も意識して子どもの土台作りだけはしてやりたいなって改めて思っています。
最後に、僕のようについつい、子どもの将来について思い悩みすぎてしまう人には、ぜひ本書を読んで子育てという肩の荷を下ろしてほしいなって思います。それが結果、子どもにとっての最高の子育てにもなるはずですから。