自ら勉強が楽しいと思えば、子どもは自ら学ぶ。それはそうなんですけど、「勉強好き」の子どもってそうそういないだろうし、簡単にはいかない。
けれど最近、子どもが自ら学ぶ方法がわかってきた気がするんです。
子どもが自ら学ぶには、辞書と図鑑を使うのがよい。この方法にしっくりきたと思ったのが「自ら学ぶ力をつける 深谷式辞書・図鑑活用術」という本を読んでから。題名のとおり、辞書と図鑑を使う勉強法が書かれているのですが非常に奥が深い。僕の中で、この辞書・図鑑を使うという方法に腑が落ちました。
今日は、こちらの本を書評してみたいと思います。
- 子どもに辞書や地図の読み方を教えたい人
- 子どもと一緒に辞書や地図を楽しみたい人
- 子どもの探究心を伸ばしたい人
- 子どもの「なぜ?」にきちんと答えたいと思っている人
本書と著者のプロフィール
深谷圭助氏
1965年愛知県生まれ。名古屋大学大学院博士課程修了。刈谷市立亀城小学校勤務当時に、1年生に国語辞典を与えて生活のあらゆる場面で辞書を引き、付箋を貼る「辞書引き学習法」を実践。その後、中学教師を経て2008年から立命館小学校校長を務める。(著書発行時)
深谷圭助氏の関連著書
本書の要点ポイント(書評)
「世界初」となる発明・発見をした人は、学校の成績がよかった人というよりも、自ら進んで学んだり勉強したりした人である、という著者。
子どもの頃に、自ら学ぶ力をつければ、学校で学ぶカリキュラムに縛られることなく、どんどん自分で学んでいける。子どもが自ら学ぶ手段として、本書では主に「辞書を引く習慣を身につける」方法を伝授してくれる。
初版は2010年とやや古いですが、ずっと使えるメソッドであり、立命館小学校で校長を務められ、辞書引き学習を確立された深谷圭助氏の渾身の一冊が本書です。
ここからは、僕が本書を読んで為になったと思う点を紹介していきたいと思います。
子どもの「なぜ」「どうして」に適当に答えていないか?
子どもの「なぜ?」「どうして?」を大事にしようという話はよく聞くと思います。子どもの頃、知的好奇心は旺盛ですから、その疑問に対して
パパ知らないな~
と一蹴するのは、子どもの知的好奇心を摘んでしまう事は、多くの親であれば学んでいて、出来る限り子どものなぜ?に答えようとしていることと思います。僕だってそうです。
ですが、本書はもう少し踏み込んで
- 親として、知らないといけないから曖昧にしておこう
- 調べた事はないけど、とりあえず経験と勘で適当に答えておこう
と「曖昧」「適当」「正しい答えを調べない」ことが、子どもの学びたいという知的好奇心を摘んでしまうと指摘されています。
これにはドッキリしました。子どもの「なぜ?」について自分なりに答える努力はしていたつもりですが、適当、曖昧、正しい答えを調べないのであれば、これは、「なぜ?」に答えていることにはならない。
子どもの「なぜ?」に答える事ってもっと丁寧でないといけない、意外と難しく奥深いなと本書を読んで感じましたね。
子どもは小学校入学と同時に知的好奇心をなくしてしまう
小学校に入学した途端「なぜ」「どうして」という知的好奇心を失ってしまう子が多い。その原因は、子どもたち全員に同じカリキュラムを教える学校教育にあると指摘する著者。
興味関心も、能力も違う生徒に一律同じカリキュラムを教える学校教育の弊害については、未来型の教育を訴える多くの識者が指摘されているところですが、著者は2010年にすでにこの問題を指摘されています。
僕は最近未来型の授業についてよく考えるのですが、日本は、必要最低限だとする学習指導要領は確かに詰め込み過ぎだと思っています。一部、学校の勉強が好きで、できる子は楽しいかもしれませんが、大部分の子は、一律の勉強は楽しいものではなく学校はつまらないものだと思って過ごしているだろうと想像します。これは今も昔も変わらない。
生まれた時に、あれだけ好奇心旺盛だった子どもが学校教育によって、学ぶ意欲をなくしていっている。何とも皮肉な事だと思います。
辞書はわからない言葉をひくのではなくて、知っている言葉をひく
本書の辞書引き学習方法で僕が最も印象深かったのが、辞書はわからない言葉をひくのではなくて、知っている言葉から引くという話でした。
通常、学校で辞書の使い方を習う場合、当然、知らない語句を調べるように教えられると思います。しかし、これでは子どもの知りたいという気持ちを引き出すことはできないし、何より楽しくないでしょう。
そうではなくて、知っている言葉を辞書の中からどんどん見つけてみようというところからはじめる。そして知っている言葉には付箋をどんどん貼っていく。そうすると、自分がどんな事に興味があるのか可視化できたり、それをマッピングすることで自分の頭の中を客観的に覗ける楽しさが出てくるんだそうです。
考えてみれば僕も長女と図鑑をみるとき、調べるというのではなくて、好きな魚とかをお互いに見つけて付箋を貼るといった遊び方をしていました。我ながらよい遊び方だったなと本書を読んで思います(笑)
わからないことが分かると楽しいのですけど、まずは純粋に「学ぶことは楽しい」という気持ちが大切。これは絶対に忘れてはいけないことです。
なぜ勉強をしなくちゃいけないのか?
本書でもうひとつ響いた言葉があります。もし学校の先生が、子どもに「なぜ勉強をしなくちゃいけないの?」と聞かれた場合、それだけで、その教師はプロの教師として失格だと書かれていた点です。
今までの僕は子どもにこの質問をされたとき、頭をフル回転して「将来のためになる」とか「どんな勉強も社会に出るときの基礎になる」とか答えていました。
しかし著者は、「なぜ勉強をするのか?」についての答えはシンプルに「学ぶことが楽しい」から学ぶという答えしかないとおっしゃっています。共感しましたね。
だから僕が子どもに「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」と聞かれているという事は、子どもが学ぶことを楽しく思っていない証拠(苦笑)
であれば、親として、基礎勉強は必要だとは思うけど、自分が楽しいと思う分野の学習を、学校の勉強とは別にとことんするように話しています。
我が家は辞書をどう使っているか?
長女が小さい時に、本当にたくさんの辞書、図鑑類を買いました。次女も家にあるこれらの辞書、図鑑を読むようになって、これが本当に良かったと今は思っています。
これらの辞書類、図鑑類は子どもが年齢を重ねるごとに今は段々使わなくなりましたが、我が家では幼い頃に辞書をひいた、図鑑で調べた楽しさの経験を活かして、自分が関心のある分野の専門書を買ってやって調べさせています。
長女は音楽が大好きで音楽の専門書を買ってやっています。長女はそれを見て調べて、時に分からない事をインターネットでも調べています。
一方、次女はゲームが大好きなので、買ったゲームの攻略本は必ず買ってやって、それを調べるようにさせています。いずれも自分自身が好きな分野ですから、調べるのが楽しいようで、毎日欠かさず読んでいます。
もともと僕は子どもたちに「本を読める子」に育てたいという思いがあり、子どもが小さい頃はずっと読み聞かせを頑張っていました。
なぜ僕が子どもに本を読んで欲しいと思ったのか?
色々理由はあるんですけど、自分が好きなことをとことん調べて、その分野の専門家になるくらい探究してほしい。中でも、良質な情報は本に載っているから本は読めるようになってほしい。そう僕は思っていて、だから本を読ませたいと思っていました。
子どもと本を読んでいた時は、辞書や図鑑に子どもの探究心を引き出す効果があるとは夢にも思っていなかったのですが、本書と出会って一本の線で繋がったと思っています。
そして今、辞書や図鑑がひける子こそが、将来必ず伸びると確信しているところです。
結論。辞書・図鑑は、自分が興味関心があることを調べる楽しさをすることが出来る
本書の構成は、著者が考案された辞書引き学習方法にページが多く割かれています。堅苦しい辞書の引き方を紹介されているわけではなくて、辞書の楽しみ方を紹介されていると思ってもらえばいいと思います。
辞書引き学習方法は小学1年生からはじめるのが最も効果が高いとのことで、本書は小学生低学年のお子さんを持つ親御さんが読むと最もよいと思いますが、辞書と図鑑こそが、自分の興味関心を引き出す最強のツールだと理解するためにも非常に本書はよい本だと思います。
深谷圭助先生は、辞書引き学習法の先駆者でいらっしゃいますが、僕が大好きな小川大介氏も著書「頭のいい子のリビングには「辞書」「地図」「図鑑」がある」で辞書・図鑑の重要性を説いておられます。
勉強って学校の勉強だけが勉強じゃないって事を最近よく思います。自分が楽しいと思う事をとことん学ぶ。それが学習である。再度、思い直した次第です。
本書を読んでから、もう一度原点に戻って、次女とゲーム本で好きなキャラクターとか付箋貼りの遊びをしようと思いました。次女に、調べる事の楽しさを改めて教えてやれればいいなと思っているところです。