世界の幸福度ランキング7年連続1位の国ってどこかご存じでしょうか?そう、フィンランドです。ちなみに日本は51位。1経済的に恵まれていても、幸せかと問われると、その順位を大きく落としているのが日本です。
幸福度というのは、正直、価値観によって変わるものだといっていいと思います。大金持ちであることに幸せを感じる国民性なのか、お金がなくても家族と余暇を過ごせることに幸せを感じる国民なのか、人によって幸せの価値観というものは違います。
ですから一概に、幸福度1位といって、フィンランドのような国にすべき!という結論は間違いだと思います。けれど、なぜフィンランドの人達は、自分たちの人生に対して幸せだと感じているのか?それについては非常に興味がありました。
そんな時に読んだ本が、フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養という本です。フィンランドでは、幸せの根幹となる人生観について高校生で学んでから大人になり、人生を設計していくといいます。
今回は、本書について書評をしていみたいと思います。
フィンランドの高校生が学んでいる人生を変える教養
岩竹美加子氏
1955年東京都生まれ。フィンランド在住。明治大学文学部史学地理学科卒業後、7年間の会社勤務を経て渡米。ペンシルヴァニア大学大学院民俗学部博士課程修了。早稲田大学客員准教授、ヘルシンキ大学教授等を経て、現在同大学非常勤教授。(著書より抜粋)
フィンランドと日本の教育は何が違うのか?
本書を読んで、結論から書いてしまうのですが、日本の教育環境と比べて、圧倒的にフィンランドの教育環境の方がいいなと思いました。
ただ、ネットでもこの本は話題になっていたのですが、フィンランドの教育がよいというが、学力を測るPISAの成績は、日本のほうが遥かによい。それに比べてフィンランドは年々数字を落としているではないか?という指摘がありました。
※ちなみにPISAとは、OECDが実施している国際的な学力調査で、2022年の調査で、日本は読解力3位、科学的リテラシー2位、数学的リテラシー5位という素晴らしい成績です。対してフィンランドは、2000年当初1位に躍進したものに、年々順位を落としており、2022年は、読解力14位、科学的リテラシー9位、数学的リテラシー20位まで落ちています。2
ですが、それは勉強、競争社会からみた視点であり、そういう考え方もあるだろうけど、PISAの成績がよいから幸せか?というと、僕としてはフィンランドのほうが子どもは幸せなんじゃないかなって思いました。
本書では教育にフォーカスして、特に序盤では日本とフィンランドの教育を比較されています。僕はフィンランドの教育については知らない事が多かったのですが、本書に書かれていることが本当なのであれば、隣の芝は青く見えるとはいえ、僕はフィンランドの教育環境のほうが素晴らしいなって思いました。フィンランドの教育環境の何が素晴らしいと思ったかは下記に列挙したいと思います。
フィンランドの教育の何がよいのか?
教育は無償。大学も無償。
まずフィンランドの教育は無償です。教材も給食も無料。それどころか大学の学費も無償なんだそうです。ちなみにフィンランドでは学校教育で十分な教育がなされるということで、塾もないとのこと。
であればです。結婚して子どもが生まれたとしても、子どもの教育費のことを考える必要がない。これはとてつもなく大きなことです。日本では一人の子どもを大学卒業まで導くのに、1000万~2000万円かかるといわれています。この費用を一切考えなくてもよいのです。
そして子ども達に至っては、教育費で差がつくことなく、子どもに平等に教育が行き渡る。これだけでも幸せなことだと思いませんか?
僕はこのブログで教育の無償化を訴えていますが、教育の無償化は、国が口を開けば、「財源」、お金が出ていく話ばかりになるのですが、子どもへの投資だと思ってほしいのですね。子ども達に投資をすれば、将来必ずリターンが国に返ってくるわけですから。
どの大学を出たかは重要ではない
フィンランドでは大学の名前は重要視されないそうです。東京大学卒業とか、早稲田大学卒業とか、大学の名前で評価されることがない。その代わり、修士号や博士号が評価されるのだといいます。
著者は、いくら有名大学卒だといっても、4年で卒業して学士だと、「国際的にみれば低い高等教育であり低学歴」だと指摘しています。
これからは学歴ではなくて、学習歴だと僕もブログで再三書いてきましたが、まさにフィンランドは学習歴が評価される社会。だから有名大学に入るがための受験競争みたいなものもない。
今日本は、高校の授業料無償化に進みつつはありますが、高校でお金がかからないということで、受験戦争が低学年化し、中学受験が盛んです。まだ小学生の子どもに大人も解けないような問題を無理やり解かす中学受験。子ども達は小さい時から大人から相当なプレッシャーを受けて勉強をしている。
それだけ親や社会がまだ「学歴」を重要視しているのが日本ですが、子ども目線で幸せか?といわれたら決してそうではないでしょう。僕は、いずれ日本もフィンランドのように学習歴社会に変わると思っています。
高卒から大学。大卒から就職というシステムはない
日本だと高校を卒業すると大学へ進学しますが、フィンランドではそのようなシステムにはなっていないといいます。以前は大学入学者の年齢は20代後半だったそうですが、最近は23歳になったそうです。それでも、日本だと大卒でさぁ就職しようという年齢です。
つまり、エスカレーター式に大学へ入学しているものはなく、学びたいと思った時に大学へ入学している。
フィンランドでは社会人という概念がないと著者はおっしゃっている。日本だと学生と社会人ははっきりとした区別がありますが、フィンランドでは学校も社会の一部であるという考えなので、大学へいつ行こうがその順番は自由なんだそうです。
日本は、社会で生きていくために高校→大学→会社というレールがひかれている。それがよいのかどうかも考えることなく、レールにのって社会人になっている人がほとんどだと思います。ですが、フィンランドでは高校までに自分の人生をどう生きるかを学び、18歳になってからは自分で考えて人生を設計していく。レールがないし偏見がない。レールから外れると、日本では白い目で見られるから、人の目を気にする子は、自分の思うような人生設計を描けない場合もあります。
対して、フィンランドのように自分で人生を自由に設計できるって幸せだと思いませんか?
フィンランドの教育が全て正なのか?
じゃぁ、全てが全てフィンランドの真似をしたらいい教育になるよね?となるかというとそれはまた違うだろうなと思います。
特に学力の話でいえば、上記で紹介したOECDの学力調査でフィンランドの成績は年々落ちてきていますし、1990年以降、フィンランドの教育の質は落ちてきていると紹介しているブログもいくつもあります。
※フィンランド教育の失敗:日本の詰め込み教育はそこまで悪いのか?という動画は参考になります。
フィンランドの教育改革は、様々な弊害を生んできているというのはこの動画をみればわかることですし、学力だけをみると、日本の詰め込み教育も悪くない、その良さというのはやっぱりあると思います。
ですので、フィンランドの教育の何もかもがよくて、何もかもが成功しているというのは極論です。ただ、フィンランドの教育費無償であったり、いつでも大学へ通えることであったり、そういった教育インフラは、日本はぜひ見習ってほしいなと思っています。
※僕はフィンランドのよいところをとりいれながら、日本のオリジナルの教育を作っていくのがいいと思っていて、理想は、絵本作家の五味太郎氏が理想とされる学校なんですね。よかったら、五味太郎氏の勉強しなければだいじょうぶという本を一度読んでみてほしいなと思います。
学力が高いから幸せなのではなく、人生設計を自分で行うからフィンランドの幸せがある
日本では学校を卒業しすぐに社会人になるというレールがひかれていて、そのレールから外れると差別や偏見があり、それが非常に生きにくい社会になっていて、日本の幸福度を下げているのだと思います。人によって幸福の感じ方は違うと思いますが、日本の幸福度が低い一因であることは間違いない。
対してフィンランドは、教育は平等に与えられ、人生設計は学校卒業後自らする。大学はいつ入ってもいいし、就職も日本のように大学卒業後すぐにする必要もない。自らの意志で人生を歩んでいく。その人生設計ができるように、フィンランドでは高校生に人生観を教えている。その勉強内容について本書では詳しく書かれています。
日本の教育にもいいところはたくさんあります。学力も日本の方が高いでしょう。けれど幸福度と学力は決して相関しないと思うのです。
最後に本書で紹介されていた世代別の幸福度ランキングを書いてこのブログを締めたいと思います。この調査結果をみてわかるとおりで、幸せだと思っている人の割合は、2024年現在、日本よりも圧倒的にフィンランドの人の方が多い。みなさんは日本の教育や社会についてどう思われますか?
世界幸福度レポート2024年
「人生の異なる段階での幸福」というテーマで
若者(30歳以下)、前期中年(30~44歳)後期中年(45~59歳)老年(60歳以上)の4段階に分けての調査結果
フィンランド(総合1位)
若者:7位 前期中年:1位 後期中年:1位 老年:2位
日本(総合51位)
若者:73位 前期中年:63位 後期中年:52位 老年:36位