子どもに働く事の意味を話すのは難しい。親が話し始めると、くどくど説教のようになるからです。
僕自身、学生の頃は、将来何になりたいのか、どんな仕事をしたいのか、全く想像ができていませんでした。
スポットライトを浴びるような仕事がしたいと思っていましたが、具体的にどうすればその仕事にたどり着けるのかもわからず、ただ時間が過ぎていたように思います。
本来、中学生、高校生はそれでもいいのかもしれません。ですが、仕事の事をその当時もっと真剣に考えていたら、僕の未来は少しは違っていたかもしれない。
反面教師ではないけれど、子どもには学生のうちに少しでも仕事について考える機会をもってほしいなと思っています。
だけどこんな事は今、親が話しても子どもには響かないでしょう。なら、本に語ってもらおうと思いました。
それが、「なぜ僕らは働くのか」という本。
池上彰氏監修のこの本は、中学生高校生向けに書かれた働く意味を知ることができる一冊です。
- 社会に出て役立つ力を身につけたい人
- 働く意味を知りたい人
- 池上彰氏の考え方を知りたい人
- 全ての中高生
本書と著者のプロフィール
監修:池上 彰氏
1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1973年NHK入局。1994年から「週刊こどもニュース」のお父さん役を11年務め、2005年よりフリージャーナリストとして精力的に活動。世の中のしくみや難解な出来事を、ユーモアを交えつつわかりやすく解説し、テレビでも大人気を博している。(著書発行時)
本書の要点ポイント(書評)
本書は中学生や高校生に「将来の働き方」について考えてもらおうと願って作られた本です。漫画を交えて中高生が読みやすいように工夫がされています。
◎漫画のストーリー
主人公の吉田隼人君は、両親と東京で暮らしていた。中学受験で、私立中学に受かるも不登校に。二学期になるタイミングで母親の実家がある広島へ引っ越し、広島市内の公立中学へ転入することになった。そこで、本のデザイナーをしている叔母さんから、子ども向けに「働く事」を解説した本を見せてもらい、読み始める。
そこから話はスタートします。
子どもに伝えたい。働くとは?仕事とは?
仕事ってなんでしょうか?働いたことがない子どもが、想像するのは難しいことだと思います。本書は子どもに仕事って何だろうってことを色々な角度からわかりやすく説明してくれているのですが、中でも本書を読んで、僕がこれは子どもに伝えたいなと思った話を下記に抜粋してみたいと思います。
「ありがとう」の対価がお金
どうしたらお金を稼げるようになるの?と子どもに聞かれたら、
人は「ありがとう」にお金を払うんだよ。って答えます。これはどうしても子どもに教えておきたい。
中学生や高校生はまだまだ視野が狭い。例えば、アイドルになりたいだとか、YOUTUBERになりたいだとか、夢があるかもしれない。ひょっとしたら、漠然とお金持ちになりたい。そんな夢を持っているかもしれない。
その夢自体はいいことだと思うけど、自己満足でお金はもらえない。
人は、「ありがとう」の対価としてお金を払う。だから人に「ありがとう」と言ってもらえる子に育てたい。本書を読んで余計にそう思いました。
自分の好きのまわりにもたくさんの仕事がある
自分の「好き」を仕事にしたい。素敵な話だと思いますし、僕も子どもの好きは全力で応援しています。
だけど、上述したとおり中学生、高校生ってまだ視野が狭い。子どものなりたい職業ランキングを見れば、世の中にどんな仕事があるのかをまだまだ知らないことがよくわかります。
僕も中学生の頃は華やかな職業しか目につかなかったし、結局その夢も挫折。
でも、本書で教えてくれる、華やかな職業のまわりには、実は様々な仕事がある事を知っておくといい。
夢が大きければ大きいほど、叶わないことだって出てくるんですけど、その夢に関係する仕事って、実はまわりにたくさんあるんだと知っておけば、夢破れた時に、その方向に歩み出すことができるかもしれないですよね。
人のためになる仕事でやりがいを感じる事ができる
本書では、仕事のやりがいを例えるのに三人のレンガ職人*1の話が紹介されています。
レンガ積みをしている三人に何をしているのかをたずねたところ、
一人目は、
「見ればわかるだろう?レンガを積んでいるんだよ」と答え
二人目は、
「レンガを積んでお金を稼いでいるんだ」と答え
三人目は、
「レンガを積んで、多くの人が喜んでくれる教会を作っているんだ」と答えます。
恐らく僕が答えるなら、二人目の答えになるけれど、仕事をしていて、一番モチベーションがあり、充実している人は、言うまでもなく三人目だと本書は紹介しています。
大人だって三人目の人のような気持ちになるには心の余裕がないと難しいです。本当は親が鏡になって子どもに教えてやらないといけない事ですけど、なかなか。
けれど、この話を中学生のうちから知っておいて、将来ふと思い出して、仕事のヒントにしてくれたらなと思うんですね。
仕事のキャリアは8割が偶然
本書では、個人のキャリアの8割は予期せぬ偶然で決まる。*2というアメリカ・スタンフォード大学 ジョン・D・クランボルツ氏の言葉を紹介しています。
僕だって今の仕事をしていているなんて想像もつきませんでした。僕のキャリアもまさに8割が偶然であったと断言できます。
だから学生のうちはやりたい仕事が見つかってなくても悲観することはないんですね。ただ、その時その時の仕事を全力でやらないと、キャリアは築けない事を本書は教えてくれます。
これは子どもが希望していない仕事に就いた場合に、覚えておいてほしい言葉だと思うんですよね。やりたい仕事じゃないから頑張らないでは、結局仕事で成功することなんてできない。
仕事に必要なコミュニケーション能力、本当の意味
これからますますコミュニケーション能力が必要な時代だといわれます。これからはコミュニケーション能力が必要だと学校で言われて、自分のコミュニケーション能力について悩んでいる子がいるかもしれない。
例えば
- ノリがいい子
- 友達がたくさんいる子
- 堂々とプレゼンや発表ができる子
こういった子たちのことを羨ましく思っているかもしれない。けれど、これは正確にコミュニケーション能力が高いことを表してはいない。
コミュニケーション能力が高いというのは、「自分の意思を相手に伝え、相手のいう事を理解する能力」だというのは池上彰氏の持論で、本書で紹介されています。
以前、「NEW ELITE グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち」という本で、Googleでリーダになる人は、シャイで目を合わせながら話もできないような人もいたと読んだことがあります。きっとGoogleもコミュニケーション能力が高い人を池上氏のおっしゃる基準で判断されているのかなと思いました。
もし子どもがコミュニケーション能力で悩んでいるのなら、本書を読んだら勇気つけられると思うのですね。
いい子を捨てて、自分の人生を送ろう
本書は最後に、「いい子を捨てて、自分の人生を送ろう」と、中高生にエールを送っていますが、まさにそのとおり。この章は親御さんに読んで欲しいかな?
僕も子どもの人生を絶対に縛らない事。を心に誓っています。
- 親がこうしたら喜ぶんじゃないか?
- 親が恥ずかしくない人生を送ろう
- 親のために頑張ろう
こういうのは一切いらない。将来、僕のことは時々思い出すくらいでもいいし、孫とか見せにこなくてもいいし、まして一緒に住もうなんて思わなくてもいい。
自分の人生を自分の責任で後悔なく生きてほしい。
僕はそれで満足です。もし「親孝行したい」って言ってくれるなら、これが僕にとって親孝行です。
僕の事はともかく、本書の「自分の人生を生きるんだよ」というメッセージは中高生にも響くと思いますね。
まとめ 働く期間は学生時代よりずっと長い。「働くこと」の意味を学ぼう
学生時代は長いようであっという間に終わります。その後の人生のほうがよっぽど長い。僕は学生時代、何の責任もない、楽しい時間がずっと続くものだと思っていました。ですが、社会人になって時間の長さを痛感しているところです(苦笑)
親が子を守っている期間、それが学生時代ですが、働くことを意識して行動し、将来に備えている子って活躍できると思うんですよね。だって、何も考えていない子とは明らかにスタートが違う。
けれどこんな事、親が言ったって子どもには響きません。なら本書を子どもに読んでもらって、自分の責任で働くってどういうことなのか、何か感じてもらえたら嬉しい。
また本書は中高生向けに書かれた本であるけれど、親が読むのもまたいいです。僕ら親は子どもの中学受験だとか、大学受験だとか、子どもの勉強のことばかりに気をとられがちですが、子どもが社会人になって巣立っていく「生きていく力」を養えているか、本書を読んで考えてみてもいいと思います。