新年最初の書評は、ボーク重子氏の「非認知能力の育て方」です。
ずっと気になっていた本ですが、本書の副題が、「心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育」ということで、おおかた10歳までの子育てを終えていた僕は読むのを後回しにしていました。
しかし最近、色々な子育て本を読んで、非認知能力をもっと深く学びたいなという思いが強くなってきました。
非認知能力は0~10歳までが最も伸びるといわれています。ですが、子どもは10歳を過ぎたけど、まだ非認知能力を伸ばす方法があるのではないか?
そんな思いで、本書を手に取りました。今回は、子どもは10歳を過ぎたけど、子どもの非認知能力をまだまだ伸ばしてやりたい。そんな視点から書評を書いてみたいと思います。
ちなみに非認知能力とは、主体性、自己肯定感、回復力、やり抜く力、共感力など様々な能力がありますので、一言では言い表せません。
僕は理解まで結構時間がかかったのですが、下記に紹介する7冊を読めば、大体、非認知能力とは何かがわかってくると思いますので参考いただければと思います。
本書と著者のプロフィール
ボーグ重子氏
ICF認定ライフコーチ、アートコンサルタント。福島県出身。30歳の誕生日前に渡英、ロンドンにある美術系大学院サザビーズ・インスティチュート・オブ・アートに入学。現在美術史の修士号を取得。1998年渡米、出産。子育てと並行して自身のキャリアも積み上げ、2004年、念願のアジア現代アートギャラリーをオープン、2006年、ワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時は上院議員)と共に「ワシントンの美しい25人」のひとりとして紹介される。(著書発行時)
本書の要点ポイント(書評)
著者は子育てにおいて、日本で行われている勉強の詰め込み教育は一切せず、「非認知能力」といわれる、子どもが自分で問題を解決する力、強い心を育てることに注力しました。その結果、著者の一人娘スカイさんは2017年「全米最優秀女子高生」コンテストで優勝し、多くのメディアに取り上げられ話題となりました。
「娘さんをどんなふうに育ててきたのですか?」
「どの時期に、どのくらい勉強させればいいのでしょうか?」
と問われることが多かったという著者ですが、早期教育や勉強の詰め込みをしたことがないのはもちろん、テレビやゲームを禁止したことも一切ないといいます。
唯一気を付けていたことが、娘さんの「生きる力」を伸ばすということ。これが非認知能力だったというのです。
非認知能力は学力以外の能力ではありますが、娘さんが通われた学校の同級生のSAT(大学進学適性試験)の平均点は、2400点満点中、2100点で、娘さんもほぼ満点だったでそうです。
この点について僕が思うところは、著者の家庭教育が素晴らしかったのはもちろん、著者の学校選びが良かったことはあるだろうなと思います。
娘さんが通われたボーヴァワール校は、教科書を使って勉強しない、宿題も出ないという学校でありながら、系列の高校は学業面ではトップクラスという学校なのだそうです。
子どもが大きくなれば家庭で過ごす時間よりも学校で過ごす時間のほうが多い。環境が子どもを育てると僕は常に思っていて、娘さんは、著者の愛情をたっぷりと受けながら、素晴らしい学校環境を与えられ、そこで伸び伸びとまさに、まっすぐ伸びられたのだろうなと僕は推測しています。
非認知能力は何歳でも伸ばすことができるのか?考察
著者が家庭でお子さんの非認知能力を伸ばすために注力したのが
- 家庭でのルール作り
- 豊かな対話とコミュニケーション
- 思う存分、遊ばせる
の3つ。お金をかけるのではなく、労力をかけるのだという話は共感しました。
これを読んで、以前、中室牧子氏の著書「学力の経済学」で、子どもに勉強しなさいと声かけするだけの簡単な労力では勉強しないという話を思い出しました。結局、親が労力をかけた分だけ効果もあがるのだなとその時、思ったものです。
では、非認知能力は何歳まで伸ばすことができるのでしょうか?我が子は10歳を超えましたが、10歳以上の子でも、家庭教育で非認知能力は伸ばすことができるのでしょうか?本書を用いて、考察していきたいと思います。
×家庭のルール作り
著者は、子どもの自己肯定感を高めるために、やりたいことをやらせることは大切。でも、それは何でも子どもの思い通りにさせるということではないといい、家庭のルール作りをされています。
本書で紹介されている家庭のルールは
どんな家族でありたいか4つの基本ルール
- いつも礼儀正しく
- 正直に生きる
- 自分で出来る事は自分でやる
- 家族の責任のある一員として生きる
Doルール(必ずする)
- 朝の挨拶「おはよう」と夜の挨拶「おやすみ」をいう
- 夕食は家族みんなで一緒に食べる
- 夕食の際、テーブルマットを置くお手伝いをする
- 靴の紐は自分で結ぶ
Don’tルール(してはいけない)
- 怒鳴らない
- 嘘をつかない
でした。
我が家もこうしたルールを作っておけば良かったなと今更ながら後悔しました。子どもが幼い頃にルールを決めておけば、ルールがあるのが当たり前、守るのが当たり前になるという著者。まさにおっしゃるとおり。
うちの娘たちはだいぶん成長していますので、今からたくさんのルールを作ると反発がありそうです。1つ、2つ、本書を参考にルールを作ろうと思っていますが、10歳を越えてからの効果は難しいかなと思います。
△対話
子どもの非認知能力を伸ばすのに、親子のコミュニケーションは欠かせません。著者は、イエスノーでは答えらえない質問で子どもの自分で解決する力を養っておられたそうです。
- 「どんな方法がある?」
- 「自分だったらどうすると思う?」
という問いかけです。
親としては非常に面倒で時間がかかる問いかけですが、親が労力をかけた分、子どもの非認知能力が養われる。
思春期の子に、こういった質問は嫌がられる可能性があり、効果は限定的かもしれませんが、まだ遅くはないと思います。なので、△
△遊ぶ
近年のアメリカでは子どもを熱心に遊ばせる親が増えていて「プレイデート」*1という子ども同士が遊ぶ時間をもつ習慣があり、非認知能力を伸ばすのに遊びが重要だと認識されている。著者の娘さんの学校でも、「子どもの仕事は遊びである」といわれていたそうです。
遊びは楽しく自発的に行われるものであり、好きだから、物事をやり遂げようとするし、何度でも失敗からも立ち直り学ぼうとする。遊びこそが、非認知能力を伸ばす。
僕はこの話をきいて、「賢い子はスマホで何をしているのか」を読んだときのことを思い出しました。
スマホがダメだとか、デジタルデバイスがよくないとかではなくて、子どもは純粋に面白いと思う事に夢中になります。単純に、今日本の学校は退屈なのだと思います。だから、みんなスマホやデジタルデバイスに夢中になる。親である僕も、スマホよりも面白い遊びを子どもに提案できていない。
著書では、日本で外遊びが減っているアンケート結果を引用し、その理由は
- 1位:テレビゲームやカードゲームの屋内遊戯の充実
- 2位:公園ルールの厳格化
- 3位:習い事が忙しい
であると述べられている。
長野県の公園廃止問題、公園ルールの厳格化の縮図のような話ですが、本当に情けない。
僕も子どもを遊ばせるのには本当に気を使いまくっています。日本は子どもが元気に遊べる環境がなくなっているし、これで子どもの運動能力が落ちていると発表されても、そりゃそうだろうというしかありません。
著者はスポーツをお勧めされていますがその理由として、誰でもいつか必ず負けるからとおっしゃっています。
負けても立ち直る力の事をレジリエンスといいこれも非認知能力ですが、スポーツでこの能力を身につけることができます。
スポーツが気軽にできる、練習できる環境が今の日本にないのはやっぱり悲しい。これからの子ども達の為に子どもが子どもらしく遊べる環境を国としても推奨、整えてほしいなと思います。
今、学校のクラブは先生の長時間勤務で問題になっていますけど、子どものレジリエンスを養うのにクラブはいいと思うのですね。
外部委託でもいいし、クラブは存続して欲しいですね。10歳からでも非認知能力が伸びると思います。
◎親の自己肯定感を高める
非認知能力で重要な能力に自己肯定感があります。
しかし、本ブログでも何度も紹介させてもらいましたが、日本人の高校生の自己肯定感は諸外国と比べてダントツに低いことが知られています。
子どもの自己肯定感を高める方法的な本もたくさん出ているのですが、著者は、
親の幸せも不幸も子どもに伝染する。といい子どもの自己肯定感を高めるには、親自身の自己肯定感を高めることが大事だとおっしゃっています。
スーパーマザー症候群という言葉があるそうですね。いわゆる母親を完璧にこなそうと思い、こさせない事に落胆し、自己肯定感を下げているような方。
ですが、その落胆は伝染し、子どもの自己肯定感も下げてしまう。
僕は父親でありますが、僕も完ぺき主義的なところがあります。ですが、子育ては理想通りいかない事の方が多い。なら、完璧主義をやめて、もっと子育てを楽しもうと心がけているところです。
これは子どもが何歳でもできそうですし、親が今からできる事ですね。
◎子どものパッションを探す手伝いをする
本書では「好き」のことをパッションといい、非認知能力を伸ばすのに欠かせないキーワードとして何度も登場します。
好きだから、楽しいから、子どもは自分からやろうとするのです。もっと知りたい、もっとうまくなりたいと思うのです。失敗しても、もっとよくなるように自分で工夫するのです。そして好きなことをやっているときは自然と笑顔になります。そんなとき、自己肯定感が低いわけがありません。
と著者はいいます。
そして、そこに「何のためにやるのか」という大きなビジョン(目的意識)が加わったときに、最後までやり抜く力や共感力が発揮されるといいます。
ものすごく共感しました。
好きだけじゃなくて、「何のためにやるのか」ビジョンを常に問うていたという著者の子育てはやっぱりすごい。僕も子どもがどう自分の好きを活かしていくのか、自分で考えられるように常にビジョンを問いかけるようにしました。
これこそ子どもが何歳であっても、非認知能力を伸ばす効果があると思います。
子どものパッションは見つかるまで探す
さて、子どもの好きが見つからないという方も多いのではないかと思います。今日から塾をやめてみたの著者・宝槻氏も好きを見つけられる子は実はレアなんだとおっしゃている。
著者は待つのではなく探しに行く、子どもに色々な体験をさせる、それこそが親ができる最高の贈り物かもしれないとおっしゃっている。素敵な言葉ですよね。
パッションでは食べていけない?
「パッションだけでは食べていけない。」そう思う方も多いと思います。僕もそのうちの一人でした。
ですが、ここでも著者の話が参考になりました。
著者の娘さんがバレリーナを目指されていましたが「バレリーナでは食べていけないのだからやめなさい」とは一切言わず、その代わり、好きなバレエを長く続けるためにどうしたらいいか考えようと話し、
経済的に困窮しないように高校や大学にはきちんと行った方がいいという発想はすごいな思いました。
僕もこの考え方は、大事にしたいなと思いました。
結論 非認知能力は工夫次第で何歳でも伸ばせる
僕が長女が幼かった頃は、子育て本を読んだことがありませんでした。当時は読み書きができて、体操ができて、ピアニカが弾けて。そういう早期教育の幼稚園がテレビで特集されていて、僕も
「いいな~、あんな幼稚園に通わせられたらいいな」
と思っていたものです。
長女の中学受験を終えて、少し時間ができました。それから本を読んで、非認知能力ってあるんだ。それは学力のことじゃないんだと衝撃を受けました。
本書でも、非認知能力が最も伸びるのは、0~10歳だとおっしゃっていますが、非認知能力を伸ばすのはやはり幼少期が最もよいのは疑いようがありません。
ですが、10歳を超えても非認知能力は伸ばせるのではないかと本書を読みましたが、まだまだ非認知能力を伸ばすために出来ることがあると僕は思いました。
確かに、幼児期だから伸びる非認知能力もありました。ですが、子どものパッションを探し、それをサポートすることは今からだって十分できることだと本書を読んで勇気をもらいました。
結論、非認知能力は何歳でも伸ばすことが出来ます。親のパッションが失われない限り。