僕が子どもの頃見ていたドラえもん。僕の子どもが見ていたドラえもん。世代を超えて愛されているアニメがドラえもんです。その主人公は、もちろん、ドラえもんであり、そしてのび太です。
のび太に憧れる子どもは少ないでしょう。
勉強はダメ。運動もダメ。普段はジャイアンやスネ夫にいじめられます。
けれど、のび太はご存じの通り、学校のマドンナであるしずかちゃんと結婚するのです。また映画になれば、ジャイアンやスネ夫を引っ張っていくほどのリーダーシップを発揮する。のび太って不思議な人物ですよね。
まぁ、これって漫画の世界だよねと片付けてもいいのですが、のび太はなぜ、これほどまでに愛される人物なのか?その秘密にせまった本があります。
「のび太という生き方」という本です。
この本は一見、子育てには関係ないように思うかもしれませんが、子育てに焦りを感じている親御さんが読むと勇気をもらえる一冊だと思うので、今回紹介したいと思います。
- 子どもが、のんびりしすぎていて将来を心配している親御さん
- 子どもに何の取り柄もないと嘆いている親御さん
くろちゃんパパ
- 思春期の娘二人(小学生、中学生)のパパ。
- 子育て本、教育本を100冊以上読む。
- 娘が生まれた時からずっと子育てに関わり、娘たちと今も良好な関係を築く。
- 長女の中学受験の勉強に毎日付き合い、中高一貫校の合格を親子で勝ち取る。
- 勉強だけで優劣が決まる今の教育に疑問をもち、未来型の教育に関心を持ち勉強中。
今回紹介する本:「のび太」という生き方
横山 泰行氏
1942年岐阜県生まれ。1976年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。フルブライト交換留学生。富山大学人間発達科学部名誉教授。生涯スポーツ専攻。教育学博士。ドラえもんアナリスト。「ドラえもん学」研究。1999年富山大学にて単位認定のない自由参加型ゼミ「ドラえもんの世界」を開講。ドラえもんの誕生日である同年9月3日には、ホームページ「ドラえもん学コロキアム」を開設し、「ドラえもん学」を宣言。(著書発行時)
のび太のような子どもに育てたい(書評)
のび太というのは愛されるキャラクターです。マンガの世界のキャラクターだといってしまえばおしまいですが、のび太は人生の成功者であり、その人生には学ぶべき点が多いというのが、ドラえもんアナリストであり、著者の考え方です。
本書では数あるドラえもん作品の中から代表的な作品をピックアップしながら、のび太の魅力を分析。成功のメソッドとして紹介されています。懐かしい作品もたくさん出てきて、小さい頃ドラえもんを見ていたという親御にとっても読みやすく感慨深い本になっています。
のび太の将来は、ロボット工学者?!
さて、本書を語る前に、ドラえもんには、都市伝説になっている最終回があり、これがとてもよいので紹介したいと思います。藤子不二雄先生が書かれたものではなく、ファンの方が書かれたものだそうですが、僕も思わず涙してしまうほど、非常にクオリティーが高く、感動的な作品です。
【ストーリー】
ある日突然、ドラえもんが電池切れで動かなくなります。電池交換をすれば動きますが、そうするとドラえもんの記憶は全て失われてしまうという。悩んだ末にのび太は、ドラえもんとの思い出が消えてなくなる事を拒み、自分がロボット工学者になり、ドラえもんをなおすことを決意します。
ドラえもんが動かなくなってからののび太は、ロボット工学者になってドラえもんをなおすことだけを目標に勉強に打ち込み、出木杉君さえも上回る成績をおさめるようになります。
そして月日は流れ35年後、ロボット工学者の第一人者にまで成長したのび太が、ドラえもんをなおす時がやってきます。実はドラえもんの開発者はのび太だったという本当に感動の話です。
この話が本当であれば、のび太は本当に人生の成功者だといえますが、本家のドラえもんでは、未来ののび太もそれほど出来る男に成長しているわけではありません。
それでも、子どもの頃からの夢であるしずかちゃんとの結婚という、夢を叶えたのび太は、人生の成功者といえます。のび太はなぜ愛されるのか?
本書ではたくさんののび太の魅力が書かれているのですが、僕が特に印象に残っている、また子育てに活かせたらいいなと思うメソッドを下記に紹介していきたい。
のび太のような心優しい子に育てたい
僕らも気が付いている。のび太は誰よりも心優しい少年です。のび太のようなピュアな心を持った子どもに育てられたら、それだけで子育ては成功といってもいいと思う。
のび太のこの心優しい姿がしずかちゃんの心を打ち、最終的には結婚を決断することになったんだろうなと容易に想像できます。
本書で紹介されている「台風のフー子」の話は、のび太の心優しさを再認識できる心温まる感動の話の代表作です。
【ストーリー】
ドラえもんのポケットから出てきた正体不明の卵。実は台風の卵でした。危ないから捨てようというドラえもんに対して、のび太は反対し、フー子と名付けて大事に育てます。
台風ですから、成長するたびに風力が強くなり、ついには家の中をぐちゃぐちゃにしてしまい、ママに捨ててきなさいと怒られるのび太。それでもフー子のことを庇い愛するのび太。
ある日、日本列島に大型台風がやってくるとニュースが流れます。押し入れにかくまわれていたフー子は押し入れを飛び出し、大型台風と激突。のび太を守ろうとして、大型台風もフー子も消えてなくなったという切ないストーリーです。
勉強が出来るように、スポーツが出来るように。僕はどうしても子どもの能力をあげることばかりを考えて子育てをしてきたように思い反省しています。
長女の時は、習い事も複数、勉強もスポーツもと思い頑張りましたが、長女にはプレッシャーだったことと思います。次女の時は、もう好きにさせました。音楽の習い事は1つやっていますが、それ以外は本当、それこそのび太のようにのびのびと。
次女は、動物や生物を育てるのが大好きで心優しく育ってくれていると思います。勉強やスポーツといった能力じゃなくて、子どもの心優しい姿に成長をみてやれるといいなと改めて思いました。
のび太のように一人立ちできる子に育てたい
のび太のエピソードを語る上でどうしても忘れてはいけないのが、代表作「さよならドラえもん」にみる、のび太の優しさ、そして強さでしょう。
【ストーリー】
ドラえもんが未来に帰らないといけないことになります。
ドラえもんが、ジャイアンやスネ夫にいじめられないか心配だというと、のび太は、ジャイアンに一人で決闘を望みます。
「ぼくだけの力で、きみに勝たないと・・・。ドラえもんが安心して帰れないんだ」
ドラえもん(6)てんとう虫コミック
殴られても殴られてもジャイアンにしがみつき、ついにジャイアンはのび太に降参します。そして、ドラえもんに
「勝ったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ、ドラえもん」というあのシーンは、誰もの胸を打ったことだと思います。
のび太は、ドラえもんにずっと依存しようと思っていたわけではない事がこのシーンを見てもよくわかります。
子どもは親からやっぱり自立、巣立ってこそ、成長するものだと思いました。元開成中学・高校校長であった柳沢幸雄氏は、著書「男の子の自己肯定感を高める育て方」で、18歳になったら、子どもに1人暮らしをさせさないとおっしゃっています。
親が用意してくれた環境ではなくて、自分で環境を作り上げたのだという自信が、自己肯定感を育む。というのですが、のび太もまた、ドラえもんに頼らず自分で出来たんだという自信が、自己肯定感を高めたのは間違いないと思います。
のび太のように勉強以外の得意を伸ばしてやりたい
僕もすっかり忘れていたのですが、のび太は勉強やスポーツはからっきしダメですが、その他に特技がありました。それは、あやとりと射撃で、ドラえもんからもこの2つに限っては天才だと認められているほどの特技です。
あやとりはともかく射撃が得意なのび太はタイムマシンで西部劇の舞台に行き、治安の悪い町で、無法者を次々にやっつけて平和な町を取り戻すという「ガンファイターのび太」という物語が本書で紹介されています。
ここで僕が思うのは、勉強以外でも何でもいいから特技がある事は、自己肯定感をやっぱり高めるのだなと思いました。
自己肯定感は、本来は人と比べない事で育まれるものといわれています。
ですが、僕は人というのは弱い生物で、やっぱり承認欲求を求めてしまうし、人に認めてもらうことで自己肯定感は高まるのは間違いないと思うのです。
のび太だって、このように射撃で人に認められたり、また映画のような大舞台で活躍し認めれたりすることで、自己肯定感を高めていっているのではないかと推測します。
勉強ができることは大事だと思いますが、上述の柳沢 幸雄氏が、勉強だけでなりたっている自己肯定感は意外ともろいものだおっしゃっています。
何でもいいので特技があり、それをやり遂げたという自信がつくと、その子の心の支えになると思います。だからこそどんな些細なことでも、子どもの得意は見逃さず、伸ばしてやりたいと思いました。
のび太のようなごく普通の子でよいと思えると子育ては楽になる
最後に。
僕の同級生に本当にのび太のような友達がいました。のび太と同じく眼鏡をかけていて、勉強もスポーツも特別に出来る子ではなく、ガキ大将にはいじめられていました。殴られ、眼鏡もよく吹き飛んで、時には眼鏡が割れ壊れた事もありました。
でも彼のスゴイところもまた、のび太のように決してガキ大将に屈しず、立ち向かっていったところでした。
僕は彼のことがとても面白くて魅力的で、いつも遊びに誘っていました。ただ、彼は遊びたい時は遊んでくれましたが、嫌な時ははっきり断る子でもありました(笑)それがまた面白い奴だとなって、断られても断れても彼を誘っていたことを思い出します。
今、考えると彼もまたのび太のような魅力的な人物で、心の強さをもっていました。
本書を読んで改めて思ったのですが、子どもに特別な能力がなくても、魅力的な人間に成長することはできるんだなと本当に思います。勉強ができなくても、運動ができなくても、ありのままの子どもを認めてあげることができたら、きっと子どもは子どもなりに強くたくましく育つ。
本書を読んで、子育てが少し気が楽になったような気がしました。