自民党総裁選に決着がつき、石破総裁に決定いたしましたが、総裁選では若い力、最年少首相の期待が高まっていた小泉進次郎氏の発言が何かとクローズアップされました。
小泉氏は自民党幹事長で本命といわれながら、その発言が誤解を生むことも多く急激に支持が失速したといわれています。
解雇規制の緩和が一番叩かれていたと思いますが、「無理して大学へ行く必要がない」という発言が言葉尻だけをとらえられてネットやワイドショーで叩かれていたのが僕には印象的でした。
しかしです。「無理して大学行くな。例えば田舎の旅館の従業員にとかになればいい」この部分だけを切り取って、小泉氏を非難するのはいかがなものかと僕は思います。
むしろ僕は小泉氏の言いたい事がよくわかったし、教育を変えていくんだという強い意志を感じました。
今回は小泉氏が言いたかった事を僕なりに解釈してみたい。
小泉氏の大学が全てではない。は間違いではない
大学にかかる費用のデータ。奨学金を利用してまで大学へ行きますか?
僕はこのブログで何度も大学の必要性についての疑問を書いてきました。
少子化が進み、大学全入時代に突入。難関大学をのぞいて、大学へ進学するのは全く難しくなくなりました。大学進学率は、今や60%を超えます。1990年代が25%くらい1だったので、いかに今の大学入試が容易かがわかります。
つまり以前は大学に受からなかったような層まで、お金さえ払えば、大学へ進学できるようになったということです。
さらに返済が必要な奨学金を利用して大学へ進学している学生も多く、約3割の学生が奨学金を利用して大学進学している。2
とにかく大学へは行っておこう。今そういう風潮なんです。
しかし大学の費用は4年間で、私立理系なら500万円以上、国公立であっても250万円以上が必要です。3この金額を将来返済しなければいけない奨学金で賄うのであれば、今の時代リスクしかありません。
借金を背負ってまで大学へ行く価値はあるのでしょうか?について次に述べてみたい。
全員が全員、大学で学びたいことがあって進学しているか?
どうしても大学で勉強したいという学生ならば奨学金を利用して大学進学は価値があると思います。もっというなら僕は以前から大学で本当に学びたい学生、一定の学力がある学生については無償化で行かせてあげるべきだといってきました。
ですが、日本の大学生が授業時間を含めて1日3.5時間しか勉強しないという記事や、指定校推薦が受かったら、全く勉強しないという記事からも推測できるとおり、全学生の60%が本当に大学で学びたいと思って進学しているかについては疑問です。
つまりまだまだ大学に勉強しに行くのでなくて遊びにいく学生が多いという事です。僕はこの層は大学に進学しても意味がないと思っています。
モラトリアムや学歴シグナリングをどう考えるか?
勉強しなくてもとりあえず大学へ進学するべきだという声もあります。モラトリアムといって、とにかく大学生には時間があります。この時間を有意義に使って、自分のやりたい事を固めたり、自分の進路を真剣に考えたりできる。
そもそも自分もそうでしたが、高校卒業時点で、何を勉強したいのか、どんな職業につきたいのか、これらが明確になっている学生は少ないと思います。
であればとりあえず大学へ進学して、大学で学んでいるうちに自分の方向性を決めていく。こうした考え方もひとつ有効なのかなと思います。
また学歴シグナリングという言葉もあります。
日本社会は学歴社会。大卒であるだけで、高卒よりも優れていると評価される。これを学歴シグナリングといいますが、大卒は給料も高く、よい会社にも入れる。そう信じて親も子に大学進学をすすめるケースは多いと思います。
ですが企業が学歴を重視する割合は年々減ってきています。42021年のdodaキャンパスの調査によると新卒採用において、人事担当者が重視するのは、人柄、志望動機。学歴より高いといいます。大学を出ただけで評価される割合は年々減っていると考えて間違いありません。
大学の中退率は、今後増える
また簡単に大学へ行けるようになると、ただ大学へ行きたいだけの学生と大学のミスマッチが起きるはずです。
こちらの記事は非常に良記事だったと思います。
・大学進学希望者は増えたが、学びたいことが思い浮かばないという生徒も多い。
・保護者の影響力が年々強くなっている。本人ではなく保護者の意見で進学先が決まる。
・早く確実に進路を決めたいからと、指定校推薦枠から選ぼうとする生徒や保護者が増えた。
・3年生の最後まで勉強に集中してほしいが、年内入試で合格を得た生徒から遊びだす。
高校の先生の進路指導の悩みとして紹介されていますが、こうした大学入試を勉強のゴールとして考えてしまうような進路の決め方だと、大学へ入ってから苦労するので注意が必要です。
例えば、受かりそうだという理由だけで経済学部に入学したけれど、数学がさっぱりわからず、授業についていけない等。今は大学も昔ほど簡単に卒業させてくれないので、単位を簡単に落としてしまい、最悪のケース、中退ということもありえます。
大学の中退率もできればよく調べて進学したほうがいいです。
小泉氏の無理して大学へは行くなの意味とは?
大学に行かないと稼げない社会の改革を訴えられたはず
じゃぁ、このような学生と大学のミスマッチをどうしたら解消できるの?ってところに、小泉氏の「無理して大学へ行くな」に繋がっていくはずです。
小泉氏は、大学進学に価値がないということを言っているわけではなくて、
(勉強したくもないのに)無理して大学へ行くな
と言いたかったはずです。
ひとつひとつの発言が注目されて、揚げ足もとられる政治家ですから、はっきりと物が言えなかったと思いますが、小泉氏は学歴を取得する為だけに大学へ行く教育を改めようというメッセージだったのだと僕は思いますし、それは近未来の教育の方向性としては正しいものだと思っています。
起業家のホリエモンは、ボーダーブリー(Fランク)の大学へは行くなとはっきりと言っています。
大学へは学びたくなった時に行け。通信制大学の躍進
僕も学びたい事がないのなら大学へは行かなくてもよいと今は思っています。というか、学びたくなった時に大学は行ったらいいと思っていて、今後、学びたい時に大学で学ぶ人はかなり増えていくだろうなと予想しています。
僕もいいおじさんですが、実は今大学で学ぶことを検討しています。社会人を経験して、自分が学びたい事がはっきりしてきて、学びたいと思うようになりました。
検討しているのは通信制の大学です。通信制の大学はこれから伸びていくだろうなと思います。来年春に開校する通信制大学に、ZEN大学5や岡山理科大学の通信制学部などがあります。ZEN大学は、高卒から進学する子が多いと思いますが、岡山理科大学の通信制は、どちらかというと社会人対象。今後、社会人対象の通信制大学は増えていくでしょう。
通信制大学を検討している時に実感したのですが、大学の学部を選んだり、授業を選んだりするのって大人になっても難しいんです。それくらい、大学で何を学んだら、どういうキャリアに進めるのかわかりにくい。
それを高校生にしろといっても出来る子はそう多くないと僕は思います。だったらある程度社会人経験を積んで、学びたい事が明確になってから、大学へ通うほうが学びのミスマッチが少なく遠回りのようで近道のような気がします。
近未来の大学の進学は高校卒業後すぐというわけでもなく、学びたい時に進学する。こう変わっていくように思いますし、大学で学びたい事がないのであれば、無理して大学へ行くな。小泉氏ではないですけど、そういう社会になっていくのかなと僕は思っています。小泉氏の発言は決して間違っていないし仮に彼が改革できなくてもいずれそうなっていくと。そう思いますね。