来年、高校生の娘がいます。僕と同じように高校生になるお子さんがいらっしゃる方は、大学受験の心配をされている方も多いと思います。また塾通いをさせているという親御さんも多いと思います。
ですが、大学ってみながみな行くところなんでしょうか?今回は、大学の中退率をテーマに、大学進学について考えてみたいと思います。
大学の中退率を知っていますか?
親は子どもが大学に入学したら安心という方も多いのではないでしょうか?ですが、今大学は我々親世代よりもずっと卒業しにくくなっているようです。
僕が大学の中退率について知るきっかけとなったのが、「大学職員のリアル」という本に大学の中退率についての記事が書かれていたからです。
本書は2023年に発売されているのですが、データは2012年と少し古いデータが引用されています。本書によれば、大学進学者の8人に1人が中退している。
仮に高校1クラスから35人が大学へ進学したとして、そのうち4~5人程度が中退した計算になります。さらに別の4~5人程度は留年を経験。実に4分の1が、大学を4年で卒業していませんでした。
大学職員のリアル
衝撃的でした。
何とか大学くらいは卒業してほしい。そう思って子どもを叱咤激励し、塾にも通わせて、入学を勝ち取り、やれやれ子育てもひと段落だと思ったら大学を卒業できずに中退する。今、大学って結構卒業しにくいのです。
平成26年に文科省が発表している資料でも1全学生数2,991,573人中、79,311人が1年間で中退していることが確認できます。中退率は2.65%ですが、これは1年間での数字ですから、×4年にすると、約10%が中退している計算になります。
もちろん中退には経済的な理由もありますが、中退理由に学業不振をあげている割合も増えている(全体の14.5%)ことが資料でも確認できますし、朝日新聞でもとりあげられる2ほど、密かに社会問題化しているのが、大学の中退率です。
AO入試か一般入試かどうかは関係がない
僕は大学へ行くならば基礎学力があることが必須だと以前からこのブログで伝えてきましたが、今は大学進学実績を競う高校が簡単に学校推薦を出し、それで受かる生徒も多い。結果、大学入学後に苦労している学生が多いと連想していましたが、中退率だけでみれば、推薦入学で入学した学生なのか、一般入試で入学した学生なのかはあまり関係がないようです。
入試種別ごとの中退率に至っては、「指定校推薦で入学した学生の8割以上が中退」「一般入試の入学者が100%が中退」といった例もありました。
大学職員のリアル
私も勘違いをしていたのですが、そこは誤解のないように伝えておきたいと思います。
なぜ大学の中退率は高いのか?
大学中退率がこれほどまで高いとは思いもよりませんでしたが、なぜこれほどまで中退率が高いのでしょうか?中退理由は、様々あり、経済的な理由で致し方がない理由もあります。ですが学力不振による中退は、あきらかに学生と大学とのミスマッチから起こっている問題です。
大学進学率があがりすぎている
中退率があがっている理由のひとつは、大学進学率の高騰があげられると思います。30年前は30%以下だった進学率は今や50%を超えて過去最高になっている。3
本来ならば、大学へ行けない学力の生徒も大学へ進学しているという仮説を立てられると思います。結果、大学へ行ってみたけれど、授業についていけず中退してしまう。
高校までに学ぶ授業が大学に直結していない可能性
もうひとつ、これは僕の経験からですが、高校までに学ぶ授業内容と大学の授業内容が直結していないのではないか?という疑問があります。高校までは、大学に受かるための勉強をして大学へ入学するわけですが、大学で学ぶ内容とリンクしていない。僕が大学の教科書を初めて買った時に、内容がとても難しくて理解に苦労した記憶があります。
今、大学入試改革が行われていますが、従来型の学力だけを問う一般入試であれば、学生も入学後苦労するのではないかなと思ったりします。
大学へ入学してみたけれど、授業内容がよくわからない。そんな状態でも皆が皆、高校卒業後、大学へ行く。そんな事で、本当に子どもの未来は開けているといっていいのでしょうか?
それでも大学へ行きたい人へ
大学へ行くのならば、大学で何を学びたいのかを明確してから大学へ行かないと、学生にも、高い学費を払う親にもメリットはないと考えます。
僕は以前はAO入試に懐疑的でしたが、今、総合型選抜入試(旧AO)での入学が伸びてきていると聞きますが、この入学方式が一番いいと思います。
大学へ学びたい事がないのに大学へ行くという学生は多いと思います。そういう学生こそ、総合型選抜入試で、自分が大学で何を学びたいのかを明確にして、大学入試を受けることが大事だと僕は思います。
大学のシグナリングが通用しない時代になる?
皆が皆、大学へ行くのは、大卒というブランドや価値を手に入れる為です。以前は、大卒というだけで価値がありました。これを学歴シグナリングといいますが、今は、大卒が50%を超える時代です。もはや大卒だけでは価値がない時代になったといってもいいでしょう。
企業側も大卒だけではなくて、大学で何を学んできたのかに採用基準をおくようになりますし、すでにその傾向は出てきています。4
学びたい事がないのに、大卒という資格がほしいだけで大学に行くと4年間を無駄にすることになる可能性があるといっても過言ではないと思います。
やりたい事がないのであれば、大学に行くのもありだが・・・
一方で、大学は4年間というモラトリアム(猶予期間)があります。どうしても大学で学びたい事が見つからなかったとしても、大学で学びたい事を見つけるという考え方もあります。
大学で自分が学びたい事、やりたい事を見つけることができれば、それは素晴らしい事ですが、そのためには大学の授業を理解できるための基礎学力は最低限持ち合わせていないと厳しいのは言うまでもありません。
大学の中退率は調べておこう
子どもが大学で学びたい事があれば全力で応援しましょう。ですが、とりあえず大学に行っておこう。という場合は親としては注意しておきたい。大学の中退率は調べておいて損はないでしょう。
例えば薬学部。薬剤師の資格が取れるということで人気があると思うのですが、高い中退率がある大学があります。
大学に中退率を公表するように提言はあった5ものの、中退率を進んで公表する大学も少ないのが現状です。ホームページで中退率を発表している大学もありますが、もし公表されていないようであれば、大学に直接問い合わせて中退率を把握しておくのも大事です。
大学へ行かなくても食べていける社会にするために親が変わろう
大学が無償化されない限り、そして大学信仰がなくならない限り、教育費が家計を圧迫し、少子化も進行する一方です。特殊出生率が1%をきり過去最低の0.72で過去最低を更新した韓国では、「貧しい夫婦は子どもを産むべきではない」という事が拡散されるほど、子どもによい教育を受けさせられないのであれば、子は産むべきではないという考え方が広がっているといいます。
ですが、ここは発想を改めるチャンスだと僕は思います。今こそ大学はみながみな行くところではない。という原点に立ち返るべきです。そして大学へ行かなくとも働いて十分な所得が得られる社会になるべきです。
昔は大学進学率は30%以下だったわけです。本当に大学で学びたい人は大学で学び、そうでない人は専門学校で手に職を得たり、高卒で働いて、働いているうちに大学で学びたくなったらいつでも大学で学べる。そんな社会になるべきです。
そうすれば、大学へ進学したけれど勉強についていけず中退するといった事は必然と少なくなると思います。
そのためには、まず僕たち親が難関大学信仰をやめなければいけません。そうすれば、難関大学への合格実績をアピールする中学、高校も変わらざるを得なくなります。
学生を採用する社会も変わらなければいけません。そして、もちろん学生にも強い意識改革が必要です。大学へ進学するならば、そこで何を学んだかをアピールすることができなければ、大学へ行った意味がない事を理解し、勉強に励む必要があります。
ちなみにアメリカの大学の中退率は40%にもなるそうです。6大学を卒業するのは本来、これほど厳しいものであり、遊んで卒業というような甘いものではないのですね。