岸田総理が、念頭あいさつで異次元の少子化対策をやっていくと表明されてから、俄然、周辺の少子化対策の議論が活発になってきました。
岸田総理が慌てて少子化対策に触れられたのは、下記記事、やはり2022年の出生数が、80万人を割る見通しになったことが少なからず関係しているかもしれません。
将来国を支えていく子ども達が少なくなれば、国を支える税収は増えません。少子化対策はまさに待ったなしだといえます。
岸田総理のいう異次元の少子化対策の中身は、これから具体化されるようですが、今のところ期待できそうにないという声が大きいし、僕もそう見ていますが、いい意味で、大きく国民の予想を裏切って欲しいと思う。
さて政府は、出産一時金を現在の42万円から50万円への増額*1を決定しました。我が家はもう子どもを作る計画がないのですが、これから子どもを出産するご家庭においては、嬉しい施策であることは間違いないでしょう。
ただ一時金で、出生率があがるか?といわれると、僕でもこれで「もう一人子ども」とはやっぱりならないです。
他、検討されている育休休業給付金の拡充*2も素晴らしいとは思います。
ですが僕もブログで何度も書いていますが、子育てに本当にお金がかかるのは、子どもが大きくなってから。子どもが小さいうちにかかるお金は誤解を恐れずにいうのなら、そこまで困ってはいない。
もし政府が一時金や、子どもが小さい頃に限定した施策を異次元の少子化対策として考えているようなら、少しは子育て支援になると思いますけど、異次元の少子化対策というには程遠いと思います。
他方、東京都の月額5,000円支援は子どもが18才まで続く支援。金額のこと色々言われますが、月5,000円あれば、子どもに習い事をさせてあげることもできるでしょうし、これは本当にありがたいと思います。
大阪はもっと先行していて、習い事月1万の補助があります。*3
政府も児童手当の拡充を検討していますが、地方のほうが実行が早い。いずれも少子化対策になるかといわれるとならないとは思いますが、少なくとも政府よりはスピーディーかつ的を得た施策をうっていると思う。
異次元というなら、大学無償化はやっぱりインパクトがある
もし本当に政府が異次元というくらいインパクトのある少子化対策をしてくれるのなら、所得制限なしで大学無償化を実現してほしいです。
今は進学率が50%を超える*4時代ですから、親としたら子どもが大学へ行きたいかどうかは現時点でわかっていなくても、大学へ行くことを前提として費用を計算してしまいます。
繰り返しますが、子育てで本当にお金がかかるのは子どもが大きくなってから。大学受験準備から卒業までにかかる費用が、一番高額。私学なら、なんだかんだで一人1,000万円近くかかる*5と考えたら、二人なら2,000万円です。
子どもは産んで終わりではない。立派に育てるのが親の仕事。だから自分が責任をもって育てられる子どもなら何人と計算してしまう。少なくとも僕はそうでした。
この記事では、パラサイト・シングルの名付け親で、家族社会学の第一人者・中央大学教授の山田昌弘氏が、僕の思いを代弁してくれています。
少子化が加速している背景には、“いま、お金が足りない”から子供を産めないというより、将来の子供にかかるお金のほうが心配だからと“産まない”ほうを選択する若者が増えている実態があります。つまり将来の学費の心配をなくしてあげたほうが、少子化対策としての効果は大きい。
全員が全員、大学無償は違うと思うけど、大学で勉強したい意欲のある子であれば、無償化してあげて欲しい。もし大学が無償化なら、親だってお金の計算方法はずいぶんと変わってくる。2人だった子どもを3人産もうというご家庭も少なからず出てくると思う。
高校無償化は大分、進めてもらいましたから、教育にほとんどお金がかからないとなれば、子どもを安心して産める一つの材料にはなると思う。(保育の問題はまだありますが)
子育て支援しても少子化対策にはならない。子どもを作りたいと思える施策が必要
少子化の原因についてよく言われるのが、婚姻数の減少です。
これについて独身研究家の荒川和久氏は、少母化といって、母になる人の母数が減っているのだから、出生数が減るのは当たり前だと指摘されています。
荒川氏は、1婚姻あたりの出生率は1996年から変わっていないし、結婚した女性が生む子どもの数自体は実は昔からそれほど変わっていないと主張されています。少子化の原因は子どもを産む女性の数が減っている少母化にあるとおっしゃっている。
そうであるなら、子育て支援をしても少子化自体は解決しないことになります。若い人が結婚して子どもを作る、または婚外子という選択肢もあるのかもしれませんが、いずれにせよ、子どもを作ろうというモチベーションをあげないといけない。
そこでいま議論されているのが、フランスのN分のN乗方式で、話題になっている。
フランスで成功したN分のN乗方式とは何か?
N分のN乗方式は、課税の対象を「世帯」とするフランスで1946年から導入されている課税方式のことです。
N分のN乗方式のポイントは、個人ではなく家族全員の所得を合計し、家族の人数で割った金額を1人当たりの収入とみなせる事。
少しわかりにくいかもしれないので、夫婦と子ども2人の4人家族で、現在の税制度と比べてみます。
現状の日本は累進課税制。年間所得に税がかかり、また所得金額が多いほど税率が高くなっています。税率は下記のとおりです。
課税される所得 課税率
- 1,000円 から 1,949,000円まで 5%
- 1,950,000円 から 3,299,000円まで 10%
- 3,300,000円 から 6,949,000円まで 20%
- 6,950,000円 から 8,999,000円まで 23%
- 9,000,000円 から 17,999,000円まで 33%
- 18,000,000円 から 39,999,000円まで 40%
- 40,000,000円 以上 45%
参考:国税庁ホームページ*6
現状、所得が600万円の人は、600万円×20%=120万円が課税となると思います。(わかりやすく控除金額は計算しない)
対して
N分のN乗で4人家族の場合は、所得を家族の人数で割れる。そうすると、
600万÷4人=150万円。1人あたりの所得を150万円とみなすことができる。
150万円なら現状の税率に当てはまると5%にまで下がるので、75,000円になると思います。これを4人分だから、75,000円×4=30万円が課税となります。
この差は非常に大きいですよね。子どもが増えれば増えるほど、割られる分子が大きくなるので、1人あたりの税が下がる。これなら子どもを産もうというモチベーションに繋がるだろうと僕も思いました。
フランスの出生率は2018年時点で1.88あり、ほぼ2に戻ったのですから、N分のN乗方式は、一定の効果があるといってもいいと思います。
ちなみに諸外国の合計特殊出生率*7を見てみると
- フランス 1.88(2018年)
- イギリス 1.68(2018年)
- ドイツ 1.57(2018年)
- アメリカ 1.73(2018年)
- スウェーデン1.76(2018年)
となっています。日本の2021年 合計特殊出生率は1.3です。
N分のN乗方式で、子どもが多ければ税負担を軽くする。具体策がないのなら、一度試してみてはどうか?
氷河期の低成長日本で生きてきた僕は、きれいごとなしに、もう一人子どもを産み育てようと思うモチベーションはお金しかないと思います。
他にも色々問題はあります。女性の社会進出が増えているにも関わらず、家事育児の負担は変わらず女性の重荷になっていることももちろん、子どもを作ろうと思えない理由のひとつだと思います。
ですが、少子化を「劇的」に改善するというのであれば、やっぱりお金だと思うし、お金が大幅に得になるであれば、子どもを作ろうと思うし、少なくとも意識すると思う。
N分のN乗方式になれば独身はもっと税率が高くなる可能性もあるでしょうし、多く税金を払わないといけないとなれば、結婚だって増えるかもしれない。
もちろん、異論も課題もあるだろうし、デメリットもあるのだろうと思います。
ですが、日本は未曾有の少子化で、価値観も多様化していることから、みんながみんな結婚や子どもを産む時代ではもうなくなった。そういった社会は認めつつ、今から子どもを作りたいと考える少ない人数で出生率をあげていくためには、やっぱり大胆な施策をうってみる他ないと思います。
年金問題も含めて日本人は特に将来のお金に不安を感じやすい国民性があると思います。僕はこれが子どもを作らない原因の根底にあると思う。
古い歌で申し訳ないですが、尾崎豊さんの歌ダンスホールの一節
「金が全てじゃないなんて、綺麗には言えないわ~♪」
というフレーズが思い浮かびます。今の日本では子どもを作るにはお金はやっぱり大事です。
綺麗ごとではなく、子どもが増えたらお金が得する税制に変えてみる。異次元の少子化対策というのなら、ひとつその手があるかもしれない。僕もそう思いました。